1. ガラパゴス老人

10月1日

「1990年代になって、データを取った方がちゃんとした医療ができるということが、知られるようになってきた」

関口 えー。さて今月は、この時代の変わり目にのパート2ということで。若い方に、わたくしが話を伺うということになりました。わたくしはこの時代の変わり目をなんとなくは感じておるんですが、もう詳しいことは、ほとんどわかりません。いってみれば、ガラパゴス老人でございます。そこで、よくご存知のメディア事情をこの独立メディア塾で担当してくれている志村さん。で、今日は、統計学でよろしいですか?統計学に詳しい西内さん。

西内 よろしくお願いいたします。

関口 もう、あなた方はね。いろんなことをご存じでしょうから。あのカタカナ語が飛び交うと思うんですよ。それ禁止ですから。

志村 そうですね(笑)。

関口 いいですか。このガラパゴス老人に。。

西内 カタカナ使ってるじゃないですか。

関口 これくらいは、いいじゃないですか。わたしに、わからない話はしてはいけない。わたしに、わからせて欲しい、ということで、お約束よろしくお願いします。で、まずですよ、わたしはなんとなく最近、強く感じるようになったのは、「あれ、毎日毎日、日が昇ってやってくるけれど、流されているうちに、時代が変わっちゃったかなぁ」ということを強く受けるわけですよ。お二人も、なんか時代が変わってるっていう感覚がありますか?

西内 そうですね。それは日々強く感じています。

関口 どの辺に感じますか?

西内 そうですね。たとえば、自分もともと医学部で勉強してたんですが、実は1990年代ぐらいから、大きな変化が起きてまして。

関口 そうでしょ。あの世界は。

西内 なにかというとですね。エビデンスとか科学的根拠に基づいて、医療をしようと。。。

関口 いまエビデンスって言いました(笑)

西内 言い換えました、科学的根拠って(笑)。科学的根拠に基づこうという考え方がありまして。で、科学的根拠ってなにか?っていうと、要するに経験とか勘とか。それを元に生物学の知識を論理的に使えば、いちばんいい医療ができるかなっていうところで。みなさん、多分いまのドラマとかに出てるお医者さんたちも、結構そういう風に治療されてる。「俺の勘がこう言ってるんだ。ほら見てみろ」みたいな感じが多いと思うんですけど。意外とそれをやるとあんまり良くないよねと。それより、ちゃんとデータを取ってですね。それを使ったほうが、より間違いのない医療ができるよねっていうのが。実はそういうのが知られてくるのって、1990年代なんですね。っていうのを、自分はそういうのを聞いたときに、衝撃を受けまして。大学に入ったのが2000年なんですけど。大学入試のために、小論文の対策もしなさいと言われて、いちおう問題集を買ったんですね。その時にもう既に、科学的根拠に基づく医療について次の文章を読みなさいという、小論文の練習問題みたいなのがあったんですよ。それって普通、初めて科学者が言い始めてから、そしてそれが地方の高校生が、小論文で考えなければいけなくなるまでって、計算すると7年ぐらい。初めて科学的な論文のなかで言われ始めた概念っていうのが、わずか7年で、田舎の高校生が勉強しないければいけなくなるっていう。すごい大きな早い変化だなぁと。

関口 それは、そういう時代になっていくんだから、歓迎しないといけない場面もあるんだろうけど。言ってみりゃ、機械頼りの医療になるっていうことではないんですか?

西内 そうですね。まず、ひとつの考え方として、よかれと思ってやることが、意外と逆効果っていうことが知られてくるようになったんですよ。

関口 人間の勘で。

西内 そうですね。たとえば、急性心筋梗塞を起こしましたよと。それで一命を取りとめましたよと。で、その後、結構不整脈で亡くなっている方がいらっしゃるんですね。

関口 ほお。

西内 まぁ経験上よく知られていて。で、皆さんそれを聞いたら、論理的に考えると、じゃぁ不整脈の薬使えよと、皆さん絶対そう思うじゃないですか。

関口 そうなりますわね。

西内 で、実際にちゃんとデータをとって、その不整脈の薬ってどれくらい効くのかなって、ちゃんとデータをとって研究してみると、逆にその状態で不整脈の薬を、当時使われていた人の方が死亡率が高いじゃないか、っていうことが、実はわかってきて。だから、理屈上正しくても、データを取るとまた別だねと。そうすると、より間違いのない判断ができるようになるよねということで、いま医療の世界で生まれたそういった考え方が、たとえば開発経済かなんかで。じゃあアフリカの経済をよくしようみたいなところでも、実際にデータをとってみると、よかれと思ってやったことがむしろ地域の経済が、あまり良くなくなってたとか。

関口 あぁ。そういうことってあるのかなぁ。あるかもしれないなぁ。

続く



2017年12月
« 11月    
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

関口宏(自称テレビ屋)
志村一隆(メディアコメンテーター・独立メディア塾・メディア事情)
西内啓(統計家)

(制作)
「日めくりテレビ」