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武隈 喜一

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2020年9月号

トランプ陣営、選挙資金枯渇か

テレビ朝日アメリカ 社長  武隈 喜一

 8月の選挙献金は民主党バイデン候補が3億6500万ドル(約388億円)を集め、トランプ陣営の2億1000万ドル(約220億円)を1億5400万ドル(約161億円)上回った。トランプ大統領は個人資産から1億ドル(約105億円)を選挙運動につぎ込むことを決めたようだ。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-09-08/trump-weighs-putting-up-to-100-million-of-his-cash-into-race

  使用済みの800億円

 トランプ陣営の選挙資金が枯渇する危機にあるのではないか、と言われている。
 現職大統領は就任式の翌日から次の選挙に向けて資金集めを始められるため、選挙資金については圧倒的に有利だと言われている。トランプ陣営とRNC(共和党全国委員会)は今年3月には11億ドル(約1155億円)を集めたと豪語していたのだが、7月にはそのうちの8億ドル(約840億円)がすでに使用済みであることが明らかになった。選挙当日まで60日を切る中、トランプ陣営と共和党は必死の資金集めに走っている。
 7月に解任されたトランプ選挙運動マネージャーのブラド・パースケイルはトランプを「再選戦争マシーン」と呼び、その集金力を称えてきたが、どうやらそのパースケイル自身の浪費も響いているようで、パースケイルに代わって選挙運動マネージャーとなったビル・ステピエン氏は就任早々、選挙宣伝費や運動員の数、出張費などの大幅な締め付けをおこなった。

  スーパーボウルに11億円

 パースケイル前マネージャーのもとでは8億ドル(約840億円)のほぼ半分の3億5000億ドル(約367億円)がさらなる選挙資金集めのファンド・レイジングに使われたのだが、それに見合うだけの資金は集まらなかった。TV広告には1億ドル(約105億円)が宛てられたが、まだ民主党の対抗馬も決まっていなかった2月のアメリカンフットボールの頂上決戦であるスーパーボウルに1100万ドル(約11億5000万円)が使われている。この頃、トランプ大統領は、民主党から出馬表明していた億万長者ブルームバーグ氏に対抗心を燃やしていたため、虚栄心で広告を出したのではと言われている。また飛行機でのトランプバナー広告に15万6000ドル(約1630万円)など、集票よりも目立ちたいがための費用が多い。

  前マネージャーの浪費で“弾切れ”

 さらにパースケイル氏自身も、運転手付きのクルマを使い、高額の報酬を得ていて、ヨットや別荘も購入したという。
 もちろん、全国に100か所以上の事務所を置き、2000人以上のスタッフを抱える運営費も大きいし、トランプ陣営とRNCは2019年以降、ダイレクトメールだけでも1億4500万ドル(約152億円)、有権者デジタルリストの取得に4200万ドル(約44億円)を費やすなど、再選に向けた大規模な選挙運動への巨額の支出は避けて通れないことは確かだ。
 しかし、パースケイル氏以外にもトランプ陣営の浪費ぶりには目に余るものがあったようで、パースケイル氏が自慢していた再選キャンペーンの牙城“Death Star”そのものが自爆してしまったと揶揄する声もある。Death starは映画「スター・ウォーズシリーズ」に登場する宇宙要塞で、ポトマック川沿いの高層ビルに入る選挙本部がそう呼ばれていた。
https://www.salon.com/2020/09/08/surprise-gop-donors-trump-ran-his-campaign-finances-just-like-his-businesses-into-the-ground/

 残り2か月を切る中で、肝心の「弾丸切れ」状態にあるといわれるトランプ陣営が、どのような形で軍資金を調達し、選挙活動を立て直すのかは、選挙戦の終盤だけに、注目していきたい。
(2020.09.10)

武隈 喜一

テレビ朝日アメリカ 社長

1957年東京生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科、
東京大学文学部露西亜文学科を卒業後、出版社、通信社などを経て
1992年テレビ朝日入社。1994年から1999年までモスクワ支局長。
2010年から12年まで報道局長。2016年7月からテレビ朝日アメリカ社社長。ニューヨーク在住。
 
 

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