ゲスト様

武隈 喜一

新着記事 記事一覧

2020年11月号

もし大統領から電話がきたら?

テレビ朝日アメリカ 社長  武隈 喜一

 ミシガン州ウェイン・カウンティはデトロイトを含む大都市圏だ。ミシガン州では、バイデン候補がおよそ14万8000票の大差をつけて、トランプ大統領を破っている。僅差ならともかく、これだけの票差を覆すことはできない――と思うのは勝利への執着心が足りない証拠で、トランプ大統領はこの大差さえ「無かったこと」にしようとしている。

  選挙委員2人が「結果証明」を撤回

 11月18日ウェイン・カウンティの2人の選挙委員会メンバーが、一度認めた「選挙結果証明」を撤回する、と委員会に申し出た。2人は共和党員の女性と男性で、ウェイン・カウンティの委員会を構成する4人の委員のうちの2人だ。そのうちの女性は、撤回の理由を「選挙結果証明を承認したのは、民主党から不当な圧力がかけられたためだ」としている。
 米国では選挙後に、各選挙区の選挙委員会が集まり、選挙結果証明を認める投票をした後で、署名がされ、正式結果となる。これまでの選挙ではそのプロセスは形式に過ぎなかった。
 この女性によれば、選挙委員会の承認会議があった17日は、自分たちを「人種差別主義者」だと叫んで威嚇する活動家たちが建物を取り囲み恐怖を感じたという。
 ところが、その日の夜、トランプ大統領みずからが、この2人に電話をしていたことが明らかになった。女性は『ワシントンポスト』紙にこう話している。

  トランプから「感動の電話」

 「17日の晩遅く、トランプ大統領から電話をもらいました。(選挙結果証明の承認票を投じた)委員会の後です。大統領はわたしたちへの威嚇があったと聞いて、身の安全を案じてくれました」。時間は二分ほどで、大統領の電話からは結果証明への態度を変えろという圧力は感じなかった、という。「大統領はわたしの安全のことだけ心配していました。感動しました。忙しい人なのに、わたしのことを心配してくれるなんて」。
 二人は大統領から電話をもらった翌日、承認の撤回を申し出た。

  当選者が「未定」になると…

もし、二人の委員の「選挙結果証明」が撤回されれば、ウェイン・カウンティでの選挙結果は確定せず、当選者は未定となる。その場合、共和党が多数を持つミシガン州議会が16人の選挙人を決める権利をもつことになる。
 選挙委員会の副委員長(民主党)は「手続き的には証明結果が州務長官に送られているので、もう遅い。二人は意思を覆すことはできない」と語っている。
 しかし、トランプ陣営はペンシルベニア州、アリゾナ州、ジョージア州でも同じように「選挙結果証明」を認めないよう、共和党の選挙委員に指示する方針で、トランプ陣営が「不正投票」の証拠を示さないまま、バイデン当選の選挙結果が確定できないままになる可能性も浮かんできている。

(2020.11.19)

武隈 喜一

テレビ朝日アメリカ 社長

1957年東京生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科、
東京大学文学部露西亜文学科を卒業後、出版社、通信社などを経て
1992年テレビ朝日入社。1994年から1999年までモスクワ支局長。
2010年から12年まで報道局長。2016年7月からテレビ朝日アメリカ社社長。ニューヨーク在住。
 
 

ページトップに戻る