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福嶋 浩彦

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2020年03号

連載 あなたの地方自治
第二回 変えたい、その男女「不」平等!(下)

中央学院大学教授 福嶋 浩彦

 前回は、市区町村でこそ見えてくるちょっとおかしな男女「不」平等について書いた。逆に市区町村が本気になれば、男女平等実現に向けいろんなことができる。


●女性だけの職員採用

 私は我孫子市長のとき、2002年から3年間、36歳から45歳までの女性に限った正規職員の採用を行った。
 我孫子市役所は当時、これから管理職になるこの世代の女性職員が極端に少なかった。原因を調査すると、1975年からしばらくの間、一般職員の採用を男性に限定していたことが分かった。
 これに対し「昔はひどかった」だけで終わらせたくないと考え、過去の差別を是正する「ポジティブアクション」(男女雇用機会均等法第8条)として、女性のみの採用を行ったのだ。
 また、本来なら女性も男性も希望すれば仕事と子育てを両立できる環境でなければならないが、現実には、子育てのため女性が民間企業などを退職することが少なくない。


●2人採用に652人の応募

 子育てが一区切りついた時期に、女性が自分の能力や経験を生かしてもう一度仕事を始めようとしても、求人はパートや派遣社員がほとんどだ。こうした女性へ正規雇用で本格的な仕事復帰の道を開こういうのが、女性採用のもう一つのねらいだ。
 2002年は、2人採用のところ全国から652人が受験。いかに仕事への本格復帰のニーズが大きいか再認識した。翌年からも高倍率が続き、外国企業で活躍した経験を持ち帰国した女性など、通常の採用では得られないような人材も採用できた。


●国は差別的人事基準

 国家公務員の人事にも差別はある、と言うより国のほうがひどい。私が消費者庁長官を務めていた時(2010~2012年)、内閣府から消費者庁へ出向してきている職員の中で、能力があるのに女性の昇格が遅れるケースが目立った。調べてみると、<職員経験〇〇年で□□歳だと大体このぐらいのポスト>という内閣府の基準が、そもそも男女で別だったのだ。内閣府は男女共同参画社会基本法を担当する役所のはずなのに!?
 私は、「消費者庁ではこんな差別を許さない」と言って、内閣府から要請された人事の決裁文書を、本当に人事担当職員の前で破り捨てたこともあった。


●「女のくせに」「男のくせに」を無くす

 ここまで露骨な差別は市区町村にはない。しかし、前回冒頭で書いたように、普通の市民にとって市区町村のほうが問題が見えやすい。地域から社会を変えていきたい。
 「男だから」「女だから」という理由で、本人が望まない役割を社会的に強制されたり、「女のくせに」「男のくせに」という理由で、本人がやりたいことが社会的に阻害されたりしない社会をつくる。―これは、2006年に制定した我孫子市男女共同参画条例の前文の一部だ。実はこの部分は市長の私が直接書いた。法令用語より普通の言葉で書いたほうが、建前だけでごまかせないはずだ。


●女性をうらやましく思う社会に

 安倍首相は「女性活躍」をうたう。しかし多くの女性は、仕事と家事を一手に引き受け、経済成長に「活用」されることを望んでいるわけではない。
 女性こそが仕事と家庭のバランスのとれた新しい生き方を見いだす可能性を持つ。そんな女性を男性がうらやましく思い、真似したいと考えたとき、みんなが幸せな社会になるだろう。経済も一人一人の生活の豊かさを基礎とした「成長」を目指せるのではないか。


福嶋 浩彦

中央学院大学教授

中央学院大学教授・ 元我孫子市長・ 元消費者庁長官。鳥取県生まれ、63歳。
1995年、38歳で千葉県我孫子市長に。3期12年務め、その間、市民自治を理念とした自治体改革を推進し、全ての市補助金の市民審査、常設型住民投票条例の制定、市民債による自然環境保全、提案型公共サービス民営化などを実現した。全国青年市長会会長。福祉自治体ユニット代表幹事。
市長退任後は中央¬学院大学教授。2010年から消費者庁長官。東日本大震災の原発事故のもと、自治体と連携し食品の安全確保に取り組む。2年間の任期を終え大学に復帰。著書に、『最先端の自治がまちを変える』(朝陽会)、『市¬民自治』(ディスカヴァー携書)、『公会計改革』(共著・日経新聞社)、『市民自治の可能性』(ぎょうせい)など。

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