温故知新
テレビ屋 関口 宏
令和元年となった2019年も残り1/4。そしてこの10月、新天皇即位の礼が22日に行われます。新天皇即位に伴い、元号を新しくする一世一元になったのは明治時代から。それまでは天変地異や政変などが起こり、世の中の空気を鎮める必要を感じた時などに、同じ天皇在位のまま、元号を変えた時代もありました。と、最近読み始めた本に書かれています。
それは、この10月12日から始まる『もう一度!近現代史』(BS-TBS・毎週土曜日昼・12時)に備えて、歴史本を少し読み始めて知ったことの一つ。若い頃あまり勉強に身が入っていなかったツケがこの歳になって巡ってきた格好になるのですが、改めて歴史の面白さ、奥深さを知りつつあります。
それにしましても私達世代は、大政奉還以降は学校ではあまり教わらなかったように思います。縄文・弥生も大切ですが、今につながる近現代史こそ教えるべきだと思われるのですが何故だったのでしょうか。ですからその後は自習。でも小説やドラマなどから得た知識は「点・点・点」のバラバラな知識。歴史が一本の「線」として繋がっていない物足りなさを、自分の勉強不足を棚に上げながら感じていました。
そこで10月スタートのこの番組では、歴史に詳しい作家の保阪正康さんから、大政奉還以降、昭和の敗戦までを時系列で一から教えていただくことになりました。
「大政奉還」。一言で片付けてしまえばそれまでですが、これは想像をはるかに超えた一大事件です。それまで徳川政権下の265年、当たり前だった国の形が壊れてしまうわけですから、人々がそれをどう受け止め、その先に何を見ようとしていたのか。そもそも「大政奉還」などという途轍もない策を15代将軍・慶喜が、何時どうやって思いついたのか。また「政権を返す」と言われても、長く政権から離れていた朝廷としては、「どうすれば良いのか・・・・?」大きな戸惑いに揺れたことでしょう
幕府を倒そうとする人々、守ろうとする人々、迫り来る外国勢を追っ払おうとする攘夷派の人々、いや先進国に見習うべきだとする開国派の人々、それらの価値観が錯綜する中、時代が進んで行きます。一人の人間の価値観も揺れに揺れたことでしょう。朝令暮改、変節、昨日の友は今日の敵。その背景を知らなければ理解できないことが日本国中で起きていたのです。
話がそれるかもしれませんが、NHK日曜日の大河ドラマ。明治維新を舞台にしたものは、それほど視聴率がとれないと言われています。それはその時代の複雑さ。ドラマチックな出来事は次から次に起こるのに、その複雑さから理解不能に陥ってしまうものと思われます。信長・秀吉・家康時代のように、敵味方がはっきりしていれば見やすいのでしょうが・・・・・。
考えてみれば、今、我々が生きているこの時代は、たかだか150年ほど前に作り変えられた明治維新の延長線上にあるのです。政治も経済も生活環境も、明治時代を引き継いだ上に成り立っているものが沢山あるのです。まだ私の予習はさほど進んでいませんが、維新の立役者だった西郷隆盛が、新政府と戦わざるを得なくなり逆賊化してしまう西南戦争も、いずれ扱われることになります。そしてこの西南戦争のどこかに起因したとされる征韓論なるものも見つめ直す機会になるのでしょう。
奇しくも日韓関係が悪化した令和元年。「温故知新」で何か見えて来ることを期待しながら勉強したいと思っています。
テレビ屋 関口 宏