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『 さよなら江戸時代 』

テレビ屋 関口 宏

 『一番新しい江戸時代』(BS-TBS 毎週土曜日 昼12時より)もいよいよ大詰め。幕末の大混乱の中、「大政奉還」「王政復古」が行われたことをご紹介して、4月からは『一番新しい近現代史』とタイトルが変わります。

 この一年、田中優子氏(江戸文化研究家)と涌井雅之氏(ランドスケープ・アーキテクト)と江戸時代を振り返ってきたのですが、家康以来260年余、他国との戦争をしなかったばかりか、自国の内戦もどうにか押えた見事な時代だったと言えるのではないでしょうか。

 それは「公家・武家諸法度」「参勤交代」「江戸屋敷に近親者を住まわせる人質策」「外交の制限」等々、家康・秀忠・家光三代で完成させた幕藩体制の結果だったのでしょう。「外交の制限」につきましては番組中、田中優子氏のご意見として、長崎の出島など、間口は狭いながらも外国との接点は保ち続けていたので、「鎖国」と断定はできないとご紹介しました。

 しかし狭い間口が災いしたのか、イギリスに始まった「産業革命」には乗り遅れてしまったようで、幕末から維新までの混乱、そして新政府作りに苦労することになりました。

 そして「富国強兵」のスローガンの元、30年ほどで「強兵」、つまり軍事力は先進国並みとなり、明治27年(1894年)には「日清戦争」、明治37年(1904年)には「日露戦争」が起きています。
 さらに大正時代には「第一次世界大戦」に参戦。以後、「日中戦争」「満州事変」「太平洋戦争」と続く歴史を歩むことになるのですが、この辺りを検証して行くのが4月からの『一番新しい近現代史』ということになります。

 お付き合い頂く方は、小泉悠氏(軍事アナリスト)、岩間陽子氏(国際政治学者)のお二人。 形式はこれまで通り、時系列に出来事を追いながら進めてまいりますが、そこに小さくとも何か新しい感じ方ができればと願っています。


 話を終わり行く「江戸時代」に戻します。
260年余を淡々とお伝えしてきた私の感想ですが・・・・・徳川慶喜まで15代続いた将軍職。 しかし「お世継ぎ問題」がいかに難しいことなのかを改めて感じました。

幼子が夭折することが珍しくはなかった時代。それが分かっていましたから、尾張・紀伊・水戸の御三家にも将軍後継の権利を与え、さらにそれでも成り立たない場合を想定して、御三卿(田安・一橋・清水)まで考えられていた史実と、それゆえ起こる政争は複雑でした。
また言うまでもなく「大奥」も、この「お世継ぎ」のために組織されましたが、そこにおける暗闘が興味深く伝えられてきました。

 そして私が感じたもうひとつの「江戸時代」。
それは・・・・「町民文化」と呼ばれるものが花咲いた時代でした。
歌舞伎等のお芝居、浮世絵を含む絵画、洒落の効いた小説、ジャーナリズムを感じさせる瓦版等々。
しかしそれらも、戦(いくさ)のない平和な時代であったからこそ花咲いたのではと思っています。

 最後に、「一番新しい江戸時代」というタイトルに相応しい情報をひとつ。
古い世代は学校で、「士・農・工・商」という身分制度があったと教えられたと思われますが、今ではそう教えていないそうです。身分制度自体はなく、生活感の中で「お侍さんと、そうでない人」というような感覚があったのかもしれないと、考えられているそうです。

 尚、『一番新しい近現代史』  第一回放送は、4月12日(土) 昼12時です。

     テレビ屋   関口 宏

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