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『 ジーパン 』

テレビ屋 関口 宏

 最近、若いスタッフ達とお茶や食事をする時、困る事があります。
それは荷物の置き場に苦労することが多くなったことなのです。いつの間にか、ほとんどの若い人たちがリュックサックを背負うようになり、5・6人集まるとそのリュックの置き場に困るのです。
 
 聞けば携帯の「パソコン」を持ち歩くのに必要だとか。確かにわが業界、オンラインによる打ち合わせが当たり前になり、そのためには「スマホ」だけでは間に合わず、「パソコン」が必要になる場面が増えました。そして狭い喫茶店や料理屋の片隅に、リュックの山が積み上げられるようになったのです。
 
しかし街行く人々にも、リュックを背負った人が増えた気がします。それがひとつの「流行」のように。


ひと昔前まで男は、必要な物はポケットにしまい込み、両手は開けて颯爽と歩くのを良しとしていたように思うのですが・・・・・。
 
 そんな「流行」のひとつ、しかも「大化けしたもの」と私が思い続けてきたものがあります。
それは・・・・・「ジーパン」。

 今では何事もなかったかのように、当たり前に私達の生活に溶け込んでいる「ジーパン」。
始まりは、戦後のGHQ・進駐軍の「お古」、「古着」、「払い下げ」。今で言うところの「メルカリ」ということになるのでしょう。
 
 それをいち早く、「オシャレ感覚」で取り入れた人が僅かながら現れたのが戦後10年ほどたった頃。しかし当時の一般的な「ジーパン」の捉え方は、「アメリカの労働者の作業衣」。だから「ジーパン」で人前に出ることは失礼にあたると考えられていました。
 
 しかも戦争体験者にとっては「敵」の「お古」。そんなものを喜んで着るなんてことはゆるされない、と抵抗していた大人も多かったと思います。
 
 それが徐々に若者たちに受け入れられるようになったのは、音楽の世界で、「ワゴンマスター」とか「テネシーワルツ」といった「ウエスタン」が流行ったことも大きかったと思われます。アメリカのカウボーイの歌・「ウエスタン」は、カウボーイが着ていた「ジーパン姿」でなければ様になりません。

更には若者向けの雑誌「平凡パンチ」のイラストなどに描かれたことも、大きな影響を与えたのでしょう。
 
 私も古い世代に入りますが、それほどの抵抗感はなかったものの、「ジーパン」に足を通すには、やや時間がかかりました。そして学校を出て今の世界に入り、若者向けの番組を担当するようになってから「ジーパン」の魅力を知りました。
 
 1番はなんといっても「気楽さ」なのでしょう。皺(しわ)や汚れ(よごれ)もそれほど気になりません。
かえってお洒落な皺だの汚れを喜ぶ傾向もあります。何も知らなければ「もう捨てたほうが良い」と思う古びた「ジーパン」が、ビンテージと称して価値が上がったりする世界です。
 
 さらにファッション界が様々な用途を提案しながら「ジーパン文化」を広げました。まだ多少「ジーパンお断り」のエリアは残っていますが、もうほとんど世界中が「ジーパン」を容認しています。
そして驚くことに、最高級の「ジーパン」は日本で作られているそうです。
 

こうした情報を今、わが番組『雑誌の記憶』(BS朝日・毎週土曜日・夕方4時~)が集めています。
近々放送予定、ご期待ください。
 
       テレビ屋   関口 宏

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