ゲスト様

新装開店

 年明け早々、それまで時々通っていた居酒屋が「新装開店」したというので覗いて見ました。確かに新しい清潔感とメニューが増えたことなど、それなりの評価はできるのですが、なんとも私には、前の店の居心地の良さがなくなってしまったような感じがして、これは何故なのか、とりあえずのビールをやりながら考えていました。


 よく見渡してみると、一つ一つのテーブルを小さくしてテーブル数を増やし、でもそのせいでトイレにも行きづらくなったし、以前あったゆったり感が薄れてしまったことが原因かと思えました。人が感じる居心地の良さとは人それぞれかもしれませんが、その居心地の良さとは何なのでしょう。「広さ」だけの問題ではなさそうです。


 私には、一見無駄とも思える何かが、人によっては無駄ではなく、何となく落ち着く気持ちになることもあるように思えるのです。例えば極端な話、自己正当化を承知の上で言わせて頂くなら、タバコ。吸わない方には無駄に思われるかもしれませんが、愛煙家にとって仕事の後の一服などは至福のひと時。決して無駄とは思えないのです。
 ま、タバコにつきましてはまた機会があればゆっくりお話ししたいと思いながら、居酒屋の居心地に話を戻します。少なくとも言えることは、無駄を徹底的に排除した合理性、効率化の中には「居心地の良さ」は存在しないような気がしています。


 最近作られた最新のホテルやオフイスビルにも同じようなことを感じることがあります。確かに綺麗だし立派なのですが、どこか隙間風が吹いているような、落ち着き場所が見つからない感じにさせられるのです。作られた方々はあらゆる事を想定したはずでしょうが、それでも計算できないのが「居心地の良さ」なのでしょう。


 「新装開店」で思い出す話がもう一つ。パチンコ屋の「新装開店」です。
子供のころ親父に連れられて行って以来、パチンコにはまりました。やがてチューリップという仕掛けが登場して、パチンコ業界が隆盛を極めました。チューリップの形をしたポケットに一つ玉が入るとチューリップの花びらが開き、周辺に来た3つ4つの玉まで飲み込まれるのです。そして受け皿にジャラジャラ、ジャラジャラ玉が出てくる。これに何とも言えない快感を覚えたものです。


 でもその頃のパチンコ屋には、「釘師」と呼ばれる職人がいて、閉店後に釘の調整をして、翌日の出す台・出さない台を決めていたと聞きました。確かにパチンコ台を良く見ると、肝心な場所の釘が微妙に曲がっていました。ベテランの客はそれを読み取り、出る台を見つけると言われていました。私にはそこまで見抜く知恵がありませんでしたから、出る台探しは、なるべく外の通りからガラス越しに見える辺り。つまり通りすがりの客を呼び込むため、外から見える辺りの台は、気前よく出すようにしてあるのではないかと勝手に思い込んだ作戦だったわけです。それでも滅多には勝たせてくれませんでした。


 そしてそのパチンコ屋の「新装開店」。店前の派手な花輪や立て看板。それは(新しい台を入れましたよ。だからまだ釘はいじってませんよ)を暗に意味するパチンコ屋の客引き作戦。それに乗せられて私も入ったことがありますが、よく見れば新しい台はほんの数台。そこはとっくに先客に占領されていました。そして中には、その花輪や立て看板を年中出しっぱなしにして、台を入れ替えた形跡がまるで見えない店もありました。


 前置きが長くなりました。今回是非お伝えしたかったのは、実はこの『独立メディア塾』が新装開店したことだったのです。ITに全く疎い私には、正直言って細かなことは分かりませんので、若いプロ達にお任せして新たなスタートをしました。願わくば、この新しいサイトが、「居心地の良い」交流の場となってくれるよう祈る次第です。今後も大いにご協力のほど、お願い致します。


テレビ屋  関口 宏

関口 宏

テレビ屋

3代にわたる江戸っ子(祖父は神田の火消し、父は映画俳優、佐野周二)。
昭和38年NET(現テレビ朝日)シオノギ劇場「お嬢さんカンパイ」でデビュー。フジテレビの「スター千一夜」の司会を務めた後、TBS「クイズ100人に聞きました」「わくわく動物ランド」「関口宏の東京フレンドパーク2」「サンデーモーニング」、読売テレビ「ワンダーゾーン」「どっちの料理ショー」、日本テレビ「知ってるつもり!?」など幅広いジャンルの番組で司会者として活躍。
 一方で、昭和52年には小柳ルミ子「星の砂」の作詞で日本作詞大賞作品賞を受賞。2012年に文藝春秋社から「テレビ屋独白」(文藝春秋)出版。

現在出演中番組
TBS:「サンデーモーニング」(日曜8:00~9:54)
BS−TBS:「関口宏のもう一度!近現代史」(土曜12:00〜12:54)

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