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MINAMATA

テレビ屋 関口 宏

 アメリカ映画『MINAMATA』を観ました。日本が、戦後の経済復興に躍起になっていた時代に起きた、公害の原点とも言われる「水俣病」を描いたドキュメンタリードラマ。熊本県水俣市の新日本チッソ肥料(後のチッソ株式会社)の工場排水が原因で、周辺の住民が手足の震えや平行機能障害等を訴え、1956年、国も公式に公害病と認定した事件です。

 主人公はこの「水俣病」の悲惨さを世界に知らしめたユージン・スミスというアメリカ人フォトジャーナリスト(1918〜1978)。彼は第2次大戦中、サイパン、硫黄島、沖縄に従軍。伴侶となったアイリーン・美緒子・スミスの母親は日本人であることからも、何か我々と縁深いものを感じます。

 そのユージン・スミス氏にとことん惚れ込んで映画化にこぎつけたのはハリウッドスター、ジョニー・デップ。製作・主演を見事にこなし、スミス氏が残した作品を紹介しつつ、どんな時代にも起こりうる公害問題に一石を投じています。

 ジョニー・デップ氏はユージン・スミス氏のどこに惚れ込んだのか。この映画から伝わってくる通奏低音のようなものは、スミス氏のジャーナリスト魂ではなかったかと思われました。



アメリカの写真家 ウィリアム・ユージン・スミス

 幼い時期に借金苦から父親が自殺。その傷を抱えながらフォトジャーナリストの道に進み、沖縄戦の取材中に爆撃にあい全身負傷。その後遺症に悩まされながらも戦後、「水俣」の現実を知り「水俣」に移住。患者や交渉団を会社側が強制排除に踏み切った騒動の中で片目を失明するも、3年間取材を続け、1975年、写真集「MINAMATA」を出版。世界に大きな衝撃を与えたのです。

 このユージン・スミス氏の功績からも、またジョニー・デップ氏の入れ込みようからも、いかにジャーナリストの存在が重要であるか、ひしひしと伝わってくるものがありました。私たちが生きているこの世界の事情を知ることができるのは、こうしたジャーナリストたちの働きによるところ大です。彼らがいてくれなければ、私たちは世界の出来事をほとんど知ることなく、「井の中の蛙」状態になってしまうのです。

 しかし最近、そのジャーナリストを取り巻く環境が良くないという話を耳にするようになりました。若いジャーナリストのなり手が減少していることは、その一つの表れと言えるかもしれませんし、そのジャーナリスト活躍の場、新聞・雑誌・ラジオ・さらにはテレビも含めてマスメディアが衰退気味なことが気になります。ユージン・スミス氏の行動を見ても、ジャーナリストの活動には、何がしらかの経済的援助が必要です。それが確保できていたこれまでのマスメデイアがピンチになってきたのだそうです。

 そんな状況を察知したジャーナリストの中には、ネット・SNSを巧みに取り入れている人も現れ始めたようです。急激に広がりつつあるネット・SNS系。やがて既存のマスコミを凌ぐ新たなメディアに成長するのかもしれませんが、今はまだ限られた世界の中で、ミニコミ的なものの乱立状態なのではないかと思われます。

 でもいつの時代にあっても、社会が健全に発展するためには、マスコミが絶対必要条件だと私は信じています。そのためにはジャーナリストと呼ばれる人たちの存在は欠かせません。そのジャーナリストたちが、生き生きと活躍できる環境が保たれる世の中が、いつまでも続くことを願っています。

 テレビ屋  関口 宏



映画MINAMATA  2021/9/23より全国公開中

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