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4月改編

テレビ屋 関口 宏

 2年半、歴史に詳しい作家の保阪正康氏と進めてきた『もう一度!近現代史』(BS-TBS 毎週土曜日 昼12時)も、いよいよサンフランシスコ平和条約調印、そして日本が再び独立国になることをお伝えして幕を下ろすことになります。

 振り返れば、「大政奉還・明治維新」から明治45年、大正15年、そして敗戦の昭和20年までで約80年。一人の人間の一生とほぼ同じ時間です。(元号の変わり目は、年がダブることになりますから、厳密に言えば、明治元年が1868年、昭和20年が1945年ですので77年間になります。)

 鎖国中の江戸時代末期、ペリー来航に驚き、日本の近代化に取りかかった「明治維新」。つまりゼロからスタートした日本は、驚くべき早さで大日本帝国を作り上げたものの、世界を敵にまわした戦争を引き起こして敗戦。約80年でまたゼロに戻ってしまったことになりました。
 その流れを、保阪氏に教えていただきながら辿ってみますと、様々なものが見えてきたように思います。


 保阪氏ご自身の中では、近・現代史の記憶がしっかり整理されており、そこから湧き上がる想いを冷静に受け止め、戦争というものの愚かさを、揺るがぬ姿勢で貫いておられる方だと感じさせていただきました。

 2年半の放送の中で、多くのことを学ばせていただきましたが、特に印象に残っていることを2つ挙げてみます。
 まず1つ。明治新政府は「富国強兵」という目的を掲げて、欧米先進国に追いつこうと国をまとめていくのですが、その中で出てきた「主権線と利益線」という考え方は印象的でした。日本という国を守るためには、主権線(いわゆる国境線ということになるのですが)の中を安定させ、その安定を守り抜くには、その主権線の外側にあたる一定の地域も、安定させなければならないとする考え方です。なにか理屈にかなった考え方に思えますが、この「利益線」なるものは、次第に拡大されていってしまう危険性をはらんでいました。日清戦争・日露戦争の根幹にもこの考え方があったでしょうし、日韓併合、満州国建設もその延長線上にあったように思われます。

 そしてもう1つ、改めて考えさせられた史実として、昭和8年、日本の「国際連盟の脱退」でした。それまで負け知らずに来た日本。ところがその日本の要求が通らなくなった国連。そして脱退を決定するのですが、日本国内ではこの決定を歓迎する空気が強かったといいます。「いさぎよし!」「自分たちは間違っていない」という空気が支配していたのでしょうか。
 しかしこれにより日本は世界を敵に回すことになりました。そして無理に無理を重ねる戦争に突入し、敗戦への道をたどることになったようです。
 この「国連脱退」については、今だから言える結果論になるのかもしれませんが、他に道はなかったのかと考えさせられました。

 この『もう一度!近現代史』は3月一杯の放送予定。そして4月からは、一気に「古代史」に戻ろうということになりました。歴史家の吉村武彦氏、そして歴史・文化の編集工学を進められている松岡正剛氏にお話を伺いながら、日本人のルーツを辿ってみたいと思っています。


 我々世代が学校で習った古代史は、その後の研究により、今ではほとんど通用しなくなっているのだそうです。原始的と習った縄文時代でさえ、三内丸山遺跡の発掘等により、相当高い文化があったことになってきているそうです。そこで新番組のタイトルは『一番新しい古代史』にしようかとスタッフと相談しているところです。
放送時間は今まで通り。BS-TBS毎週土曜日 昼12時より。 
ご期待ください。


三内丸山遺跡


 テレビ屋  関口 宏

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