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『待ったなし!』

テレビ屋 関口 宏

 映画『アニマル ぼくたちと動物のこと』を観ました。まだ幼い男の子と女の子が、好きな動物たちの、今おかれている悲惨な現状を知ってゆくドキュメンタリー。そしてそれは動物だけでなく、自分たちの未来の問題でもあることを訴えかけています。

 環境破壊、温暖化、大気汚染、プラスチックごみ、海洋汚染、動物の強引な養殖等々、現代文明の問題点を、短時間で解説できていることに拍手。更には、資本主義経済や民主主義の弱みを突いている点も興味深く感じました。
 

「アニマル ぼくたちと動物のこと」
2024年6月1日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
配給:ユナイテッドピープル/105分/フランス/2021年/ドキュメンタリー

 思えば36年前、TBS「サンデーモーニング」スタートの年の特番(毎週のレギュラー番組とは別に、年1回、特別番組を放送していました)は、「世界の環境破壊」がテーマでした。
 36年前とは1987年(昭和62年)。世界のどこからか、「環境破壊」が起こっているとの声が上がり始めた頃で、一般的にはまだ、それほど大きな問題とは捉えられてはいませんでした。

 しかし南米アマゾンや東南アジアの自然林が、容赦なく伐採される映像は心に痛く突き刺さりました。
 地球上の大気が浄化される貴重な森やジャングルが削られてゆく。目的は需要が高まる食肉用の牧場であったり、効率の良い焼畑による農業用であったりする訳ですが、連鎖する自然に与える影響は大きくなって行きました。
 緑が消えればその辺りの気象にも変化が起こる。徐々に温暖化への影響も指摘されるようになり、絶滅に追い込まれる動物の問題も大きくなって行きました。
 
 やがて世界的にも、「温室効果」とか「気候変動」という問題が取り上げられ、1997年には日本の京都で、「COP3」(気候変動枠組条約締約国会議)が開かれ、温室効果ガスの削減を目的とした「京都議定書」が採択されたのです。これは日本人として嬉しいニュースでした。
 というのも日本は、戦後の急激な経済成長の陰で、「公害先進国」の汚名を被った時代があったのです。ヘドロ、排気ガス、さらには水俣病、四日市ぜんそく・・・・・。
そんな経験を持つ日本人が先頭に立って、世界の自然環境に取り組むことを大いに歓迎しました。
 
 しかしこの世界的大テーマは、そう簡単には実現できません。先進国と発展途上国が平等に責任を負うことは不可能と思われ、先進国同士でも、発展途上国同士でも、それぞれの国の持つ条件は様々です。ですから会議はいつも紛糾して治らないことが続きましたが、現在は「パリ協定」に変わり、新たな世界的目標(一部をご紹介すると、世界の平均気温の上昇を、産業革命以前より2度以内に保ち、できれば1.5度を努力目標とする)を掲げています。それもそう簡単には進まないという声も聞こえますが、実情は「待ったなし!」のところまで来ています。

 話を冒頭のドキュメンタリー映画に戻します。
大切な地球を、こんな惨めな状況に追い込んだ大人たちを「憎む」子供達の「想い」に、不思議な変化が現れた場面が描かれていた点が印象に残りました。


作品中のシーン©CAPA Studio, Bright Bright Bright, UGC Images, Orange Studio, France 2 Cinéma – 2021
 

     テレビ屋  関口  宏 

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