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『 戦争と科学技術 』

テレビ屋 関口 宏

 今年も8月がやってきました。「広島」「長崎」「敗戦」・・・・・

私は昭和18年(1943年)生まれですから、戦後79年を知っている世代ということになりますが、実際の記憶は、昭和20年(1945年)の終戦以降の東京の焼け跡あたりからということになります。そして周囲には。旦那さん、息子さんをこの戦争で亡くされた方が沢山いらっしゃつて、「戦争」の話を聞かせてもらいながら育ちました。

 それ以来79年、日本は直接戦争には絡まずに今日に至るのですが、世界を見れば、ロシア・ウクライナ、イスラエル・ガザ、その他にも、いくつかの紛争地域を抱える現状。世界は常にどこかで戦争を続けています。

 また戦争は皮肉にも「科学技術の進化」を伴いながら続けられてきました。
その端的な例が「核爆弾」ということになるのですが、今では車の運転に欠かせない「ナビ」の技術も、最初は軍事目的の中で進化したものでした。

 そして今や戦場を支配するに至った「ドローン兵器」の進化には驚かされます。フェイク(偽画像)が氾濫する中、どこまで信じていいのか迷わされることが多いのですが、私が見たある映像をご紹介します。


 そのドローンは上空から敵の戦車(タンク)に近づいていって、兵士が乗り降りするハッチ(人が一人通れる直径1メートルもない円形の出入り口)の真上まで近づき、運んできた爆弾を狙い通りハッチの中に落とす映像でした。これを褒めるわけには行かないのですが、あまりの正確さ、見事さに見入ってしまいました。その後そのタンクは木っ端微塵に吹き飛ばされてしまうのですが、このドローンはこの戦場から遠い安全な場所で、ドローンに装備されたカメラの映像を見ながら操縦されたものと思われます。

 このようにドローン戦争は、自国の兵士を犠牲にせずに戦える戦争になった・・・・・と、簡単に捉えるわけにはいきません。敵もまたドローンを使って攻めてくるのですから、安全に戦えているわけではありません。しかもドローンは安価で大量に生産出来るため、際限なく作れて、どこにでも使えるとなると、今以上の犠牲者が出て、市民にもさらに大きな戦禍が及ぶと考えられるのです。

 そしてこのような遠隔操作による攻撃を可能にしたのが通信技術の進化です。確か「ベトナム戦争」後の「湾岸戦争」か「イラク戦争」の時だったと思います。アメリカにいる首脳陣が、ある部屋に集まり、地球の裏側でその瞬間起こっている戦場の映像を確認していたことに驚き、やがてその技術が実際の戦争での攻撃にも使われるようになるのです。ドローンの遠隔操作も、この技術の上に成り立っているものと思われます。

 そしてこの遠隔操作で敵を攻撃して成功した時、はしゃぎまわって喜ぶ若き兵士達の姿は、戦争で殺し合う悲惨な現実ではなく、ゲーム感覚で戦争をする時代になったショックを受けました。そこでは自分たちが行なった結果が、敵にどんな悲惨な状況を与えたかが判らないのでしょう。

 しかしそうした若き兵士の中から、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を起こすものが現れると聞きました。このPTSDは「ベトナム戦争」体験者の中から多く発見されたのですが、最近のドローン戦争の経験者の中からも出てきているそうで、何か不思議な感じがするのです。

 やはり個人差はあるのかもしれませんが、人間は、「超えてはならない限界」を超えた時、何らかの「心的障害」を起こす「存在」であると、言われているような気がします。

 尚、今年のTBSの終戦特番は「つなぐ、つながるSP 科学が変えた戦争 1945>>2024」8月11日(日曜)15時からです。

     テレビ屋  関口 宏

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