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『 テレビとは何ぞや? 』

テレビ屋 関口 宏

 『太田光のテレビの向こうで』(BSフジ)からお呼びがかかって、久しぶりに「爆笑問題」の太田氏と話をしました。太田氏には「テレビとは何ぞや?」を追い求める姿勢を感じていて、前々からファンではあったのですが、初めて一緒に仕事をしたのは26年前。TBS『はばたけ!ペンギン』という番組でした。
 
 「お笑いブームが来そうだ!」と先を読んだ仲間の発案で始まった番組。「ペンギン」を持ち出した理由は、いつも群れている「ペンギン」は、一羽が海に飛び込むと、皆が後に続いて海に飛び込むと言われていて、我々がお笑いブームの「先駆けペンギン」にならんとした狙いがあったのです。そして確かにその後、空前の「漫才ブーム」になるのですが、残念ながら「ペンギン」は、はばたけずに幕を引きました。

 そんな失敗談から話は広がり、「お前はただの現在にすぎない」(以前、このコラムでご紹介したテレビ界初の独立プロダクション、テレビマンユニオンを立ち上げた萩元・村木・今野3氏が出版した本のタイトル)に共感しながら「テレビとは何ぞや?」で話が盛り上がりました。

 もう一つの共通体験は1972年(昭和47年)、軽井沢近くの別荘地で起こった「あさま山荘事件」でした。連合赤軍と称する活動家達の残党5人が、山荘の管理人を人質にとって立てこもり、10日間警察と睨み合いを続ける模様を、テレビが伝え続けました。
「あれ、見ちゃったんだよねぇ」と言いながら、そこに「テレビとは何ぞや?」を考える大きなヒントがあった、と二人は感じていたのです。


事件後2009年に撮影された浅間山荘Wikipediaより

 結果としては、機動隊が大きな鉄のボウルを壁にぶつけて山荘を壊し、管理人を無事保護して、連合赤軍の残党5人を逮捕するに至るのですが、その間10日。テレビは雨戸を締め切って何の変化も見えない山荘の映像を放送し続けました。太田氏も私も時間があれば、その何の変化も見えない山荘の映像を見続けたのです。自分の家のテレビが見れずとも、電気屋のショウウインドウや喫茶店のテレビなど、テレビはどこにいても見られる時代になっていましたから、どこへ行っても「あさま山荘、どうなってる?」と、映像を追い続けました。
 我々に限らずそうした視聴者が多かったはず。それゆえ何の変化もなく、ズーッと同じ映像なのに視聴率がどんどん伸びたのです。

 そうした状況を私なりに解釈するなら、(何かが起こるはずだから、それをその時点、つまり「生」で見届けたい)とする視聴者の心理が大きく働いたものと思われます。事件の結果を知りたいのであれば、何の変化も見えない映像を見続ける必要はなく、解決後のニュース番組を見れば良いのですから。

 となれば、テレビ最強の武器・特徴は、やはり「生」「今」「現在」ということになると、太田氏も私も納得したのでした。


番組収録風景 写真提供BSフジ

 さらにそれを物語るかのように、この夏は「パリ・オリンピック」で、テレビが元気になりました。そして「夏の甲子園」。「熱中症」警戒の中、決勝戦の京都国際VS関東第一は好ゲームになり、テレビがその強みを大いに発揮しました。(私はすべての試合を観た訳ではありませんが、たまたま観られた島根の「大社」VS西東京・「早実」も好ゲームを超えた奇跡的な試合でした。)

 太田氏との話に戻ります。テレビは今、多チャンネル・多メディア化の中、難しい時代に入りましたが、まだまだやれること、やらねばならないことはあるという点でも意見は一致しました。


放送はBSフジにて、9月14日(土曜日)16時からです。

         テレビ屋   関口 宏

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