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『 大宅文庫 』

テレビ屋 関口 宏

  この10月の12日土曜16時より、BS朝日にて新番組がスタートします。
『雑誌の記憶』と銘打って、これまで出版された雑誌の中から、面白いネタをご紹介する番組ですが、その雑誌といえば、我々放送業界の人間には、「聖地」ともいうべき場所があるのです。

 「大宅壮一文庫」。(世田谷区八幡山)
国会図書館にはない、ほとんどすべての雑誌の類が保管されている貴重な所です。
 古くは1875年(明治8年)の貴族会館の「会館雑誌」に始まり、今現在の新しい雑誌も続々収められ、その数80万冊、13500種類を超えたそうです。

 収集を始められたのは、ご存知、評論家の大宅壮一氏(1900~1970)。
ジャーナリストでもあり、ノンフィクション作家でもあった大宅氏。

 「知の巨人」とも呼ばれ、新語作り名人とも言われた一つが「一億総白痴化」。
 世の中にテレビジョンなるものが登場し、新聞・雑誌を凌ぐ勢いを見せ始めた頃に発せられた一語。
 テレビ関係者は、笑いながらもドキッとさせられた言葉ですが、三女の大宅映子さん(評論家)に聞くと、ご本人もテレビをよくご覧になっていたそうで、洒落のつもりが大受けしてしまったのだそうです。

大宅映子さんに書庫をご紹介いただきました

 当時、私もドキッとさせられた一人でしたが、大きな反響があったということは、どこか言い得ているわけで、今でもテレビが気をつけなければならない点を示唆していると思っています。

 その「大宅文庫」には、テレビ番組作りに携わった者、特に作家やプロデューサーならお世話にならない人がいないと言ってもいいほど、便利なところでもありました。通いつめたスタッフも多く、企画を考えたり、情報の裏どりをしたりする場としての貴重さがありました。

 しかしこうした作業は徐々にネットでできる時代になり、テレビ屋の足が遠のき始めました。
 確かにネットで済むこともあります。でも、でも、なのです。

発行当時の本物の雑誌を開くと、不思議なことに、その時代の匂いがしてくるのです。それがオーバーな表現だとするなら、その時代の空気の様なものを感じると言えば良いのかもしれません。
 残念ながらネットではそこまで感じ取ることはできないと思っています。

大宅壮一氏の書斎を再現した部屋で収録(大宅文庫内)

 そもそも雑誌というものは「読み捨て」の文化だった様な気がします。よほどの拘りがある方、または捨てられない記事があった場合以外、買って、読んで、満足したらゴミ箱へポイッ。だからとも言えるのかもしれませんが、「大宅文庫」の存在は大切だと思われるのです。

     テレビ屋  関口 宏

10月12日土曜日からBS朝日で放送

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