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「フィルター付き」は堕落だ

 稲村

 義理の父はショートピースを愛好していました。もちろん両切りです。しかも「ピーカン」という愛称がついていた缶入りのピースでした。缶のフタを開けただけで、いい香りが流れたものです。
 ピースは1946年1月13日に発売された本格的な高級たばこでした。鳩がオリーブの葉をくわえているデザインで、第二次大戦で致命的な打撃を受けた日本が「平和であれ」という願いを込めたのでしょう。
 妻の実家に行ったときに聞かれました。「君は何を吸っているのか」。当時、私は「セブンスター」か「ハイライト」だったと記憶していますが、そう答えると「フィルター付きを吸うなんて、タバコ吸いの堕落だ」と厳しい言葉が返ってきました。
 しばらくの間、ショートピースを吸うようにしていたのですが、強すぎることと高すぎることで、あきらめることになりました。ピース派だった義父は90歳になったときにフィルター付きロングピースに替えました。長年の主張はどこへ行ったのか、と問うと「そろそろ健康も考えなければいけない」という答えが返ってきたのには驚きました。何か感じることがあったのでしょう、彼は3年後93歳で亡くなりました。

             稲村

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