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2020年9月号

政界、財界が揺さぶるNHK (下)

塾長 君和田 正夫

  文化性を欠く四季の会、JR人脈

 JR 関係出身のNHK会長、委員長が目立っています。特にJR東海です。委員長と会長の関係を整理しますと、「上」で書いた初代会長、岩原謙三氏の時代は経営委員会はありませんでした。第二次大戦後、日本の民主化の重要な要としてNHKの改革が行われ、1950年に経営委員会が誕生しました。
 それまでは会長が全体のトップでしたが、新たに制定された放送法によって会長や監査委員の任命・罷免の権限は経営委員会が握ることになりました。経営委員の選考は「公共の福祉について公正な判断をすることができ、広い経験と知識を持つ人」を総理大臣が任命します。選任については、教育、文化、科学、産業などの各分野および全国各地方が公平に代表されることを考慮しているそうです。NHK会長はその文化レベルの高い委員会の下にある執行機関のトップということになりました。

 JRの話に戻しますと、17代経営委員長の須田寛氏(委員長在任1998年~2004年)はJR東海の初代社長です。シルバーシートなどの生みの親と言われています。15代の竹見淳一・元日本ガイシ会長(1990~92)はJR東海の監査役。さらにさかのぼると12代の竹田弘太郎氏(1984年~1986年)は名古屋鉄道社長。日本ガイシ、名鉄ともに愛知県の会社です。
 そして直近まで委員長だった石原進氏はJR九州の元社長。石原氏の後継の森下俊三氏はあえて付け加えれば、名古屋大学卒。2004年に西日本電信電話の社長を経てNHKの経営委員に就任しています。
 会長の方では20代の松本正之氏(2011年~2014年)はJR東海社長を経てNHK 会長に就任しました。
 JR人脈に驚かされますが、JRから四季の会に枠を広げると、古森重隆(07年~08年)フジフィルムホールディング会長は安倍首相の強い要請で委員長に就任したと言われています。委員長の須田寛氏、アサヒビール出身の会長・福地茂雄(2008年~2011年)、そして新任の会長、前田晃伸・元みずほフィナンシャルグループ社長いずれも四季の会メンバーでした。
 こうしてみると2006年の安倍政権誕生、とくに第二次安倍政権以降、財界の特定グループを背景に露骨な人事が進められてきたことがよくわかります。とりわけ番組制作にかかわる会長人事は2008年以降、内部からの起用が無くなりました。18代の橋本元一会長(2005年~2008年)は初の技術畑出身の会長でしたが、その後は福地、松本、籾井、上田良一(三菱商事副社長)、前田と財界人ばかりになりました。
 JR、四季の会の偏重に加え、葛西氏は自分が理事長をしている海陽学園海陽中等教育学校の中島尚正校長を一時期経営委員に据えたこともありました。経営委員会を私物化しているのではないかと思えます。
 安倍政権が幕を閉じます。これを機に、委員長、会長人事にメディアも一般国民ももっと関心を持ち、声を挙げましょう。政財界によるNHK浸食を食いとめる絶好の機会です。「上」で書きましたが、NHKのポストは財界人にとって自分の「文化性」を誇示できる心地よいオモチャであり、勲章なのです。

(2020.08.25)



続きの記事

政界と財界が揺さぶるNHK (上)

NHKは2021年から2023年までの『経営計画』をまとめました。5項目の重点投資の一つが「NHKらしさを実現するための人事制度改革」です。

政界、財界が揺さぶるNHK (下)

JR 関係出身のNHK会長、委員長が目立っています。特にJR東海です。委員長と会長の関係を整理しますと、「上」で書いた初代会長、岩原謙三氏の時代は経営委員会はありませんでした。

君和田 正夫

塾長

1941年(昭和16年)生まれ。早稲田大学卒。
1964年、朝日新聞社入社、経済部記者などを経て2005年(平成17年)テレビ朝日に。
退任後「独立メディア塾」の共同代表。

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