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戦後最大の「不可思議」

塾長  君和田 正夫

 生活にかかわる数字の単位が格段に大きくなった気がします。「不可思議」というのは「億」や「兆」よりさらに大きい数字の単位ですが、まさに「不可思議だらけ」の様相です。財務相の諮問機関である財政制度等審議会はコロナ対策の補正予算を「戦後最大の例外」と位置づけました。首相が交代したばかり、参院選挙も控えている、ということで例外的なバラマキ予算は通貨の価値を大きく動かすことにならないでしょうか。
 5万円クーポンは配布経費だけで約967億円、と聞いても驚かなくなりました。アベノマスクの保管費用が6億円?そんなものは小さい小さい、と「億円」の世界を鼻でせせら笑えるようになったら、政治の思うつぼです。次の「兆円」の世界にすぐ馴染めるからです。

 「億円」から「兆円」の時代に

 新聞には「過去最大 補正予算成立」の文字が踊っています。35兆9895億円。この補正に当初予算を加えると、21年度の一般会計は142兆5992億円。財源はもちろん国債。借金です。21年度末の国債残高は初めて1000兆円を超えるとのことです。

 現実感のない兆円。「日本の税収は60兆円くらいだから、その10倍以上も借金するんだよ」と言われても、その意味を肌が感じてくれません。
 「日本は途上国ではないんだよ」と、ばかり「兆円」は攻勢をかけてきます。

 臨時軍事費特別会計の「例外」

 コロナ対策費が「戦後最大の例外」としたのは「戦前」にもっと大掛かりな「例外」があったからでしょう。
 例外の代表は「臨時軍事費特別会計」と称した軍事予算です。軍部の作戦行動に必要な経費を一般会計から切り離しました。驚いたことに戦争の勃発から終結までを1会計年度とみなしたことです。この特別会計はほとんどを借金でまかないました。
 例えば第二次世界大戦と日中戦争の会計年度は、1937年9月から1946年2月まで9年余にわたります。この期間に12回にわたって追加予算が計上されました。(鈴木晟著「臨時軍事特別会計費」)
 第二次世界大戦では1773億円のうち公債などの借入金が86%を占めました。日清、日露、第一次世界大戦でも、この方式が行われました。ついでですが、国債の日銀引き受けも満州事変の経費ねん出などのために高橋是清蔵相が導入しました。

 2022年度に改定される「中期防衛力整備計画」では5年間の総額が初めて30兆円台に載る、と新聞が報じていました。また、自民党が昨年、総選挙の公約に掲げたのは防衛費を「GDPの2%」に増やすことでした。ロシアを追い越して、米国、中国に次ぐ第3の軍事大国になる、ということです。

 臨時軍事費特別会計の「例外」

 兆の次の位は何でしょう。そう「京」です。9999兆円の次が「1京円」。これも公式統計に登場するようになりました。
 内閣府の発表によると国民資産(日本の総資産)は、2019年末で1京1375兆円。前年比3.2%増で過去最高となりました。個人、企業、政府、金融機関、非営利団体の金融資産と非金融資産を合わせたものです。

 昨年、NHKの「時代は独裁者を求めた」(新・映像の世紀)を見ていたら、戦争中のドイツで「パン1個1兆マルク」という映像が出てきて驚きました。「兆」「京」の次は「垓(がい)」。生活とかかわりの薄いところでお金が膨らんでいきます。岸田首相の「令和版所得倍増計画」に期待していいのか。財政規律などの言葉が消えてしまったいま、「おにぎり1個1兆円」の時代が来ないことを願っています。「不可思議」の上は「無量大数」。数字はいくらでも増えるものです。

(2022.01.01)

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