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軽視される記者会見

塾長  君和田 正夫

 記者会見を開くのか、開かないのか、開いて何を伝えるのか、何を伝えないのか。伝える相手はユーザーか、株主か、社員か、メディアか。記者会見は想像以上に重要な企業活動です。やり方次第で企業のイメージを一変させ、時には致命傷になる恐れさえあります。
 北京五輪のさなかの2022年2月10日、テレビ朝日の亀山慶二社長(63)が突然解任されました。上場企業のトップ解任は驚きでしたが、さらなる驚きは、解任の理由と記者会見を開かなかったことです。記者会見についてはネット上で批判の声が聞かれました。10日以上過ぎた22日、社長を兼任する早河洋会長(78)がオンラインで定例の会見を開き、改めて謝罪しましたが、月一回の定例会見にうまく合わせたようにも見えました。しかし、この会見が「定例」であるがゆえに、様々な問題点を残しました。

 参加者が限定される会見

 「定例」の会見は緊急のテーマがあるかないか、とは無関係に定期的に行われるものです。参加できる取材陣はNHK記者会(ラジオ・テレビ記者会)に加入のメンバーに限られます。今回の社長更迭のような案件にタイミングよく対応できない、参加者が限定される。この2点が「定例」の限界です。
 参加者が限定されると、奇妙なことが起きます。例えば雑誌がテレビ局について特ダネを書いたとします。それ、記者会見だ、ということになっても、書いた雑誌の記者は呼ばれないのです。日ごろ顔を合わせている仲良しクラブの記者が、質問を“代行”する形になります。鋭い追及ができるはずがありません。記者の所属は文化部・芸能部などが中心になります。
 テレ朝は解任の理由を2つ挙げました。1つは、亀山氏が私的な会食やゴルフなどに会社の経費を私的に流用した、というきわめて深刻な理由です。社長に就任した2019年6月以降の出張などで、私的な会食やゴルフなどの費用を業務上の関連があるように「仮装」した、というものです。さらに執務時間中、頻繁に社用車で私的な外出をするなどの行為があった、といいます。
 同社は「仮装」という言葉を使っていますが、「粉飾」と同じで、犯罪と認めているのと同じです。
 社長就任後に「仮装」した額はトータルでいくらになるのか。業務監査・検証委員で把握した数字はいくらなのか。流用された総額は、全額返還要求するのか。「勤務時間中に頻繁に社用車で私的な外出を繰り返した」という理由はなんなのか。
 昔、舛添要一東京都知事が都庁から神奈川県湯河原町の別荘までほぼ毎週末、公用車で通って問題になったことを思い出します。舛添氏に費用を返還させるよう求めた住民監査請求があり、都監査委員は請求を退けたものの「公用車の厳格な運行」を求めました。

 子供じみた内部のけんか

 解任のもう1つの理由「業務執行上の不適切な行為」ですが、「これが解任の理由?」と思わせる子供じみた内輪げんかです。
 2021年8月以降、スポーツ局の社員・スタッフによる不祥事が連続して発覚したことを受けて、「役職員の業務監査・検証委員会」を設置したところ、社長とスポーツ局長との意思疎通がうまくいっていないことが分かった、というのです。
 スポーツ局内の報告会にスポーツ局長を参加させなかったとか、日常的に意思疎通も十分でなかった、という、まるで子供のけんかです。
 しかし、ここまで書いてきて「子供のけんか」ではなくて、社長を見習って犯罪に手を染めた人たちが出てしまったことがはっきりしました。
 3月1日、中小企業のIT化を進めようという国の補助金をだまし取った人間が、また出てしまったのです。この関連事件ではすでに、テレビ朝日の元部長が逮捕されています。今度は報道局報道番組センターでニュース番組を担当する社員です。警察によりますと、仲間3人と、平成31年3月までのおよそ2か月間に、補助金900万円をだまし取ったとして詐欺の疑いが持たれています。

 原因、再発防止は、オープンな会見で

 テレ朝の最大の課題は再発防止です。テレ朝の検証委員会は外部の人間が入っているのでしょうか。社長人事などを見ていると“超大甘”の委員会になっている恐れはないでしょうか。調査によって「原因究明と再発防止を対外的にも提示できるような形にしたい」と説明しました。
 ここは大事なところです。お粗末と言っていい社長を生んだ原因こそ、根絶したい悪習です。役員選考で重視していることはなにか。学歴、社内での経歴、好き嫌い、私情に左右される部分が働いていないか。原因と再発防止、ぜひ会見で明らかにしてほしいものです。そして責任の所在をはっきりさせることです。身を削るような会見をしてこそ社会の納得を得られるのです。
 会見を渋って痛い目にあった代表に電通がいます。2015年12月25日、新入社員が社員寮から飛び降りて自殺しました。個人の問題として片付けようとしていた、といわれていました。翌2016年に労災が認定され、一気に社会問題になり、自殺から1年後、当時の石井直社長が記者会見で退任を表明しました。
 テレ朝さん、記者会見はいろいろな可能性と危険性を含んでいます。開かれた場に可能性と危険性をさらけ出しましょう。オープンな会見は気の弱い経営者には肝試しになると同時に、企業の透明性を一気に高めることにつながると確信します。
 テレ朝さん、挑戦してみませんか。

(2022.03.01)

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