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2023年3月、ライバルを制し91歳での優勝 1/8

  松尾 英里子 / 白鳥 美子


ストックホルムで行われた世界選手権の写真 2012年

 「負けるとやっぱり悔しいわね…」と、宮川さん。今回、日本一の座を手にした宮川さんには、36年前の初対戦以来、「一度も勝てなかった」同い年のライバルがいた。彼女の名は、土佐昭子さん。東京選手権の年代別で13回、全日本マスターズで7回の優勝を重ねてきた強者だ。バックハンドから放たれるロングサーブはスピードも強さも兼ね備えており、サービスエースを決めることが多い。「このサーブがバックに来ると、とても返せない」とこれまでの対戦で何度も苦汁をなめた宮川さんは、今回、大会を前に、90歳にしてプレースタイルを変える決心をした。
 あるとき、ドイツのルーウェン・フィルス選手の試合動画を見て、ひらめいた。「バックに来た球はカットでレシーブ、フォアはロビング(回転をかけて高く打ち上げる球)で攻める」という戦略で攻めてみたらどうだろうか。これまでとれなかったロングサーブをしっかりバックでカットし、ラリーになったらロビングで持久戦に持ち込んで、相手のミスを誘う。果たしてこれが有効なのかどうかはわからないが、とにかくやってみようと思った宮川さんは、3月の大会を目指し、前年の11月からバックカットの練習に明け暮れた。
 2023年3月、第75回東京卓球選手権。順調に勝ち上がり、ついに決勝へ。相手は、やはり、土佐さんだ。プレースタイルを新たにした作戦が功を奏し、2ゲームを連取。だが、第3ゲームは奪われた。迎えた第4ゲーム。お互い競り合って、デュースになった後、アドバンテージは宮川さんがゲット、いよいよマッチポイントだ。最後は練習の甲斐あってバックカットからのスマッシュが見事に決まり、土佐さんに初勝利。日本一となった。試合の映像を見ると、とても冷静な戦いぶりのように思えるが、「デュースになったことも覚えていない」らしい。この快挙は、テレ東『卓球塾』でも紹介された。


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