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世界バブル崩壊の予感が漂う

上智大学文学部新聞学科教授  小此木 潔

 膨らみ続けた世界経済のバブルが、崩壊の時を迎えようとしているのだろうか。最近のニュースに、そんな予感がする。

 引き金になりそうなのは、9兆円を超す有利子負債を抱える中国の不動産大手「中国恒大集団」の経営危機だ。資金繰りが悪化し、9月23日には負債の利払い期限を何とか乗り切ったが、先行きへの不安はくすぶったままだ。

 債務不履行(デフォルト)に陥れば、拡大が続いてきた中国の不動産市場や株式市場で暴落が起き、金融機関が巨額の不良債権を抱え込むという展開が懸念される。中国経済がこれまでにない深刻な不況に見舞われたり、中国発の世界金融恐慌が起きたりする可能性もある。中国だけの危機では済まないところがグローバル化した経済の宿命だ。

 中国発の金融危機か

 「世界の工場」とも「世界の市場」とも呼ばれる中国の経済が混乱すれば、世界経済も激震を免れない。危機の拡大を食い止めるには、中国が恒大を救済したり、金融機関に資本注入などでテコ入れしたりすればいい。だがそれは期待できないかもしれない。

 所得や資産の格差が広がり続ける中国では、人民の不満を抑えるために中国共産党が「共同富裕」という政策目標を掲げ、格差是正に乗り出している。

 危機だからといって、これまでさんざん儲けてきた大企業を救済すれば、党の路線を否定することになりかねない。かといって、手をこまぬいて金融恐慌を引き起こしてしまえば、習近平国家主席と党の権威は一気に揺らぎかねない、というジレンマを政権は抱えている。

 米国の政策も引き金に?

 米国にも、危機の引き金になりそうな事情がある。金融政策の転換だ。連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は9月22日の記者会見で、早ければ11月にも金融緩和の縮小を決めると表明した。来年末までに利上げする可能性もあるとされ、今後の市場は不安定さを増すとみられる。

 FRBは、新型コロナ感染症による経済危機で落ち込んだ就業者数が最悪期から4分の3ほど回復したことを理由にいずれ金融緩和を縮小するとしてきたが、実際に縮小に踏み切った場合、景気減速や市場の動揺につながる可能性がある。

 中国の経済危機で市場が神経質になっている段階で米国が金融引き締め方向への政策転換に踏み切れば、世界経済の不確実性とリスクはぐんと高まるだろう。

 リーマンショックとの違い

 2008年のリーマンショックでは、米国の不動産融資の行き詰まりが世界金融恐慌にまで発展した。経営が悪化した投資銀行リーマン・ブラザーズを救済する大義名分が立たないと判断したFRBと米財務省は、リーマンの経営破綻によって世界の金融市場がどれほど巨大な被害をこうむるか、見通すことができなかった。今度は中国が、似たような失敗をするかもしれない。

 リーマンショック当時は、中国が対米協力の姿勢から、かつてない規模の財政出動を行って世界経済の崩壊を防ぐ力となったし、初めて開催された主要20か国・地域首脳会議(G20)による財政出動と金融緩和を柱とした政策協調が大きな成果を挙げた。

 だが今は、米中の対立が深まり、両国の協力やG20 の政策協調が機能するかどうか、疑わしい。この点も心配の種だ。

 アベノミクス相場も崩壊か

 世界の金融市場はリーマンショック以降、じゃぶじゃぶの緩和状態が続いてきた。昨年来の新型コロナ感染症による世界不況を乗り切るために、金融緩和と財政出動は国際通貨基金(IMF)のお墨付きもあって、さらに積極的に推進されてきた。

 こうした政策は世界中にマネーゲームをはびこらせ、さまざまな資産価格を高騰させてきた。その構造が崩れ、世界の金融市場が大混乱に陥るとすれば、日本でも深刻な危機が起こるのは避けられない。

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や日銀の巨額資金で買い支えてきた日本の株式相場も、無事ではいられなくなる。危機の展開次第では、一挙に崩壊するかもしれない。だいじな年金の積立金を相場につぎ込んだツケが回って来ることになる。

 日本の苦い経験生かして

 最悪のシナリオを防ぐには、国際社会が中国に危機対策を求めるべきだ。とくに日本はバブル崩壊の経験をもとにアドバイスすべき立場にある。日本のバブル崩壊の引き金を引いたのは、不動産融資の総量規制という財務省の政策だった。地価高騰と資産格差拡大に歯止めをかけようとする政策で、今の中国の「共同富裕」政策に通じる面がある。苦い経験をもとに、中国にも米国にも危機回避の政策努力と国際協調を促すのは、日本の役回りではないだろうか。

 習近平政権が巨大不動産会社や不良債権の処理にすんなり動くとも考えにくいが、放置すれば中国と世界に被害が及び、政権の権威失墜も招きかねない。そのことを粘り強く説明すれば、実現は可能なはずだ。

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