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「ピアフを二度聞く 語ることなし。 私は悲しい。 泣く、初めてパリで。」

 独立メディア塾 編集部

 歌手・女優、越路吹雪(1924年2月18日~1980年11月7日、56歳)がパリで生のピアフを聞いた時の衝撃を日記に書いた。
「パリ日記・1953年5月7日より」(越路吹雪/岩谷時子「夢の中に君がいる」)

 たくさん恋をし、たくさん唄った

 歌手、女優の越路吹雪はピアフの「愛の賛歌」を代表曲にした。ピアフの歌を聞くために初めてパリに3か月滞在し、打ちのめされたた。「井の中の蛙が、パリという海に行って、そのうぬぼれがペシャンコになったことと、舞台に立つ人間は、もっと、しっかりした自信を持たなくちゃいけないと感じたこと――それが私のパリ三カ月の収穫です」と書いた。(「夢の中に君がいる」の「井の中の蛙」から)
 越路吹雪は「どうしてもパリで勉強したい」という強い思いから1953年にパリへ。4月22日、初めてピアフの歌を聴いた。岩谷時子(1916年3月28日~ 2013年10月25日)あてに「私には何もない。私の歌には内容がない。私は月夜の蟹だ」という手紙が届いた。(「聞書き 越路吹雪 その愛と歌と死」江森陽弘から)
 「月夜の蟹」というのは、見かけ倒しで中身がないと言う意味。月夜に脱皮するといわれる蟹は若ガニで、身が少なく味も落ちるから。

 「ピアフのシャンソンも、一度目のときは、ものすごく屁理屈をつけて聞き、東京の新聞に生意気な感想を書いて送ったりしたのですが、二度目、三度目には脚のあたりがもぞもぞしてきて、ピアフの歌に合わせて踊りたいような、そんな気がしたものです」
 そして表題の日記を書いた。
 「ピアフを二度聞く
  語ることなし。
  私は悲しい。夜、ひとりで泣く。
  悲しい、淋しい、私には何もない、何もない。私は負けた。
  泣く、初めてパリで。」

 「私はたくさん恋をしたし、外国へも行きたいだけ行ったし、歌いたい歌もたくさんうたえて、もうこれでいいよ」
 岩谷時子に自らの人生を振り返って言った。
(「夢の中に君がいる」から)

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