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残念すぎます、大阪カジノ

上智大学文学部新聞学科教授  小此木 潔

 大阪のみなさん、本当にいいのですか?
 どうにも理解できないので、聞いてみたくなった。あの誇り高き商都大阪が、カジノで儲けなくてはいけない理由などあるのか、と。
 大阪湾の人工島「夢洲」にカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致を進めている大阪府と大阪市は12月21日、パナソニックやサントリー、JR西日本など20社が出資に加わると発表した。
 全体の投資額1兆800億円のうち5300億円は米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスが約40%ずつ出資し、残りの約20%を今回発表された20社が出資するのだという。
 IRには年間約2000万人の来訪を見込み、納付金と入場料を合わせて毎年1060億円が府と市の収入になるとの構想だ。これから住民説明会や公聴会を開き、府と市の議会の同意が得られれば2022年4月に整備計画を国に提出する段取りだ。
 大阪市が夢洲に投じた整備費は2019年度までに約2780億円。市はさらに地盤改良などで790億円をつぎ込むという。2025年にここで開く万博は、2820万人の来場を見込む。

 依存症や悲劇の上に

 来訪者は国内から年間約1400万人といい、そのうちカジノの利用者がどれほどになるかはわからないが、ギャンブル依存症に陥る人や、カジノで損をして自暴自棄になったり、家庭を悲劇に陥れたりする人も出るだろう。そうした犠牲の上に、お金をもうけることが、立派な経済政策であると胸を張って言い切れるのだろうか。
 家電、繊維メーカーや商社、銀行などさまざまな産業が大阪で育ってきた歴史を考えるとき、その大阪が「カジノ」で儲ける道を突き進むとは、どうにも理解できない。もっとほかに知恵を絞るやり方があるのではないか。進取の精神が今も脈打つはずの大阪の人々なら、きっと別の方法で新たな経済発展の道を切り開けるのではないだろうか。
 大阪は筆者にとって、若いころ家族ともども何年かを過ごした思い出深い土地である。歴史と文化を背景に合理的思考を貫く優れた人材が豊富に存在するというのに、なぜカジノに頼るのか。どうしても納得がいかない。

 横浜はカジノを拒否した

 つい比べたくなるのが、「カジノはつくらせない」と、選挙で前市長の誘致路線を覆した横浜市の例である。2021年8月の市長選では菅首相が前面支援した候補を、野党と市民が応援した山中竹春氏が破って「脱カジノ」宣言を発した。「ハマのドン」こと横浜港ハーバーリゾート協会長の藤木幸夫氏は、横浜を築いた人々の労苦を裏切るようなカジノをつくらせないと声を上げ、山中氏を勇気づけた。
 大阪にも、そうした勇気ある人は、いるに違いない。不思議なのは、さきの衆院選で、横浜市長選のような展開が見られず、むしろ逆にカジノ誘致を積極的に進めてきた勢力が支持されたことだ。これは、有権者が投票先を選ぶ際に必ずしも政策で判断するものではないことを示す一例に過ぎないのかもしれない。だがそれにしても、カジノ誘致派の政策が支持されたように見える選挙結果は納得がいかない。

 まだ間に合うカジノからの転換

 大阪の人々は、衆院選ではカジノ誘致を主導する政治家を信認した。しかし、それは本心からの選択だろうか。再考の余地はないのだろうか。
 日本経済新聞とテレビ大阪が2020年10月に実施した世論踏査によれば、大阪府・市が誘致を目指すカジノを含むIRについて「賛成」は37%で、「反対」が52%だったという。住民投票が好きな人々は、なぜこの問題で住民投票をするよう声を上げないのだろうか。
 府と市はこの問題について、大掛かりな世論調査を実施して、そこに示された民意に従うべきではないだろうか。もう後戻りできない、などということはあり得ない。住民が本気でその意思を貫けばいい。それが民主主義ではないか。
 「本気になって志を立てよう。命をかけるほどの思いで志を立てよう。志を立てれば、事はもはや半ば達せられたと言ってよい」。松下幸之助は、こんな名言を遺したという(PHP研究所ホームページより)。その精神を、大阪の人々は思い起こしてほしい。
人 々を賭博場に誘う道を新しい経済成長戦略の目玉などとしてきた安倍政権の政策自体、間違いだったと筆者は考える。それに乗って儲けようとする大阪の姿は、あまりにも寂しい。
 お金と引き換えに失われる評判や信頼もある。名を惜しむべき時ではないだろうか。歴史の鏡に自らを映して、これが本当に正しい判断と言い切れるのかどうか。よくよく考えていただきたい。

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