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「日本史上空前絶後の暗黒の年明けたり」

 独立メディア塾 編集部

 山田風太郎(1922年1月4日~2001年7月28日)の「戦中派焼け跡日記」(1946年1月1日分)から。山田は伝奇、推理、時代の各分野で活躍した娯楽小説作家。代表作は「魔界転生」「忍法帖」シリーズなど。
 「焼け跡日記」は天皇の「人間宣言」があった1946年1月1日、「詔書発布。悲壮の御声。」で始まっている。詔書は天皇が国事行為を行うときに出す文書。敗戦後最初の新年を迎えるにあたって国民に向けて発せられた。天皇は天皇と国民の関係は単なる神話と伝説とによって生まれたものではない、天皇を現御神(あきつかみ)とすることを否定し、天皇の神格化を否定したもの、として「人間宣言」と呼ばれようになった。

 「正しき者の棲家は牢獄」

 次は山田の「戦中派 虫けら日記」(1944年6月14日)から。
「罪なくして投獄せられる国家にあっては、正しき者の棲家は牢獄である」と書いた後、「狂え!狂え!狂え!地球を覆う嵐の中に聞こえるのは、ただこの声ばかりである。崇高な狂人の話が毎日狂熱的にのせられる。自分は狂っていないと考えるものは黙っている。何かものをいいたければ、必ず狂ったことをいわなければぶじではすまない世の中なのである」。

 戦後の占領軍支配について、山田は以下のように批判している。(「焼け跡日記」昭和21年2月4日から)
 「俺には、マッカーサーの指令は、新しく自由なる黎明を告げる鐘の音ではなく、日本を墓場の中へ追いこんでゆく鞭の音に聞こえてならぬ。全日本が、その指令の賛美に夢中になっている時代にこういうのは、俺の天ノ雀(あまのじゃく)のせいであろう」。

 山田は「戦中派不戦日記」(昭和17年~19年)、「戦中派闇市日記」(昭和22年、23年)「戦中派動乱日記」(昭和24年、25年)、「戦中派復興日記」(昭和26年、27年)などを書いている。

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