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「詩とは、所詮、ものゝあはれだ…」

 独立メディア塾 編集部

 高森文夫(1910年1月20日~1998年6月2日)は詩人、政治家。中原中也と親しかった。表題の言葉は、中也を偲んだ「詩とは?」から(福島泰樹著「誰も語らなかった中原中也」ほか)。詩の全文は以下に。

 高森は成城高校生の時代、のちに音楽評論家になった吉田秀和と借家に同居していた。中原が吉田にフランス語を教えていた関係で、高森は中也と親しくなった。
 高森は戦後、地元の東郷町長を務めた。詩人、若山牧水の生家近くにある若山牧水記念文学館では同じ日向市出身の高森文夫についての第2展示室があり、資料などが展示されている。高森は自分の詩集「昨日の空」の後 記に次のようなことを書いている。満州で招集された昭和19年3月のことだ。
「生還は覚束ないのではないかと危ぶまれたので、年来書き捨ててあった幼く拙い歌屑をかき集め(略)一巻の詩集に編み、これに『泡沫集(うたかたしゅう)』と題して(略)黒竜江のほとりの荒涼たる兵営に入隊した」。

 ◇詩とは?
 詩とは永遠の郷愁である―朔太郎
 詩とは悪の華である―ボオドレール
 詩とは言葉の音楽である―ヴェルレエヌ
 詩とは知性の祝祭である―ヴァレリー
 詩とは蝙蝠傘の裂け目である―ロオレンス
 詩とは嘔吐からの逃亡である―サルトル
 詩とは不条理からの脱走である―カミイユ
 詩とは事物の中心に直入する精神である―光太郎
 ところで詩に憑かれて命を燃やし
 あたかも焼身自殺のように短い生涯を終へた
 あの中原中也が――若い身空で晩年の人のように
 皺枯れた低い声で呟くように言った
 あの言葉が忘れられない
 ――詩とは、所詮、ものゝあはれだ…
 (詩集「舷灯」)


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