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「希望には羽がある」

 独立メディア塾 編集部

 エリザベス・コルバート(1961年7月6日~)は、アメリカ人ジャーナリスト。「ニューヨークタイムズ」記者を経て「ニューヨーカー」誌記者に。生物の危機を伝える著書「6度目の大絶滅」で2015年、ピューリッツァー賞受賞。表題の言葉はこの本の第13章「羽をもつもの」から。訳者鍛原多恵子のあとがきによると、アメリカの詩人エミリー・ディキンソン(1830年12月10日~1886年5月15日)の詩「希望には羽がある」を踏まえている、と著者は語っているという。

 滅亡に追いやられるカエルたち

 「6度目の大絶滅」を書くきっかけは、著者が自分の子供のために買った児童向け科学雑誌だった。パナマ中央部の町で多彩な色を持つ「黄金のカエル」たちが姿を消していること、それを防ごうとする科学者たちの物語だ。

 さらに、その直後、衝撃的な論文が目に入ってきた。「この地上では五度にわたって生物の大量絶滅が起きた」「そしていま、6度目の出来事が眼前で起きている」。
 カエルを滅亡に追いやっているのは「ツボカビ菌」だった。しかし、カエルだけではなく、両生類が世界で最も絶滅の危機にさらされているという。
 過去5回の大絶滅の最初は、4億4千年前のオルドビス紀に海面の低下が起き、海洋生物の80%が死に絶えた。この絶滅を逃れた動植物が、現在の世界をつくっている、というのは英国の学者だ。

 2回目は約3億7400万年前だ。海中の酸素濃度減少と寒冷化が進み、生物種の82%が絶滅した。3回目はペルム紀末。約2億5100万年前の大量絶滅だ。
 4回目は約1億9900万年前。そして5回目は6500年前、白亜紀の大量絶滅で、恐竜、アンモナイトなどが死に絶えた。
 著者はサンディエゴ動物園の希少種保全研究センターを訪ねた。そこにはマウイ島に住んでいた最後の「ハワイミツスイ」という鳥の細胞が培養されて保管されていた。「冷凍動物園」と呼ばれる部屋で細胞は冷たい窒素に守られている。
 過去の絶滅の原因は気候の変化や隕石の衝突などが挙げられているが、「現在6度目の大絶滅が進行中であり、今回の原因はひとえに人類が生態系の景観を変えたことにある」(アメリカ自然史博物館の生物多様性ホール銘板)という文言を紹介している。
 著者は私たちが引き起こした絶滅によって私たち自身はどうなるか、問うている。
 答えの1つは「死に絶える」。もう1つは「才知を発揮し惨事を回避する」。


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