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「全裸の女が米軍基地を疾走する」

 独立メディア塾 編集部

 第三プロダクションの武智鉄二監督(1912年12月10日~1988年7月26日)は、演劇評論家、演出家、映画監督。プロダクションの代表。役者の型や口伝に影響されない武智歌舞伎を世に問うたことで知られる。
 冒頭の言葉は1965年、ポルノ映画裁判の口火を切った「黒い雪」の制作発表の際に武智が「反米映画」とぶち上げ、全裸の女を宣伝に使った。
 (「映倫50年の歩み」から)

 猥褻性を否定した判決、監督はガッカリ?

 武智は「黒い雪」の前に、松竹で配給した「白日夢」でも「ヒロインを全裸でデパートの中を走らせる」と宣伝し、大ヒットした。しかし、警視庁から5か所の改善要請を受けた。さらに2作目の「紅閨夢」では審査をめぐりトラブルが相次いだ。2作とも谷崎潤一郎の作品の映画化だった。
 2作に続いたのが「黒い雪」だった。1965年6月5日、日活は「有料試写会」を行ったが、会場には警視庁保安課員がいた。翌々日、映倫の管理委員長が試写室で映画を見て「容認できない」と、すぐさま臨時管理委員会を開き、日活に自主的改定を要請した。日活は16場面、8分30秒を削除して6月9日の全国公開に間に合わせた。
 しかし、この削除に納得しなかったのは警視庁だった。「猥褻物公然陳列罪」の容疑で日活本社などを家宅捜索し、武智だけでなく日活社長ら40人を起訴した。さらに映倫の審査ついても猥褻性が強いことを知りながらパスさせたとして「幇助罪」で書類送検した。審査員まで犯罪に加担した、という異例の事件なった。
 裁判は一審、二審とも無罪。検察は公訴しなかった。二審では、映画全体は「猥褻映画と言わざるを得ない」と判定したものの、「映倫の審査という自主規制機関は新憲法に合致した制度」と認め、無罪を言い渡した。全裸の女性が走る場面について裁判では「全裸の女性が戸外を走るくだりは卑猥な印象を受けることはない」と猥褻性を否定した。武智監督はがっかりしただろうか。


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