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「昨日の『朝日』に母の死亡広告が出ている。もう一週間でいい、生きのびて下すったら」

 独立メディア塾 編集部

 中井英夫(1922年=大正11年9月17日~1993年12月10日)は、日本の短歌編集者、小説家、詩人。日本の三大奇書とされる代表作の『虚無への供物』の作者として著名。表題の文章は「中井英夫戦中日記 彼方より完全版」(昭和19年9月15日)から。

 中井は死んだ母親を追慕する文章を昭和19年9月14日から書き綴っている。
 中井は母が1週間生き延びてくれたら、「今日外出して昨日の配給の苺糖と飴とでどんなによろこばせることが出来たらう」と配給にも触れている。
 「母の長い旅のみちづれになることさえすてて、後生大事にかかへこんだ『己の未来』が、どんなに恥多く生き難き生活であるかは己も承知だ。それは母の下す鞭だらうから」
 日記の「解説」で文芸・演劇評論家の川崎賢子は中井について、葛原妙子、塚本邦雄、寺山修司らの才能をみつけだした「炯眼の編集者」であり「天才主義の文学青年」と位置づけている。「お母様」「おかあさま」「オカアサマ」と数ぺーじにわたってつらぬかれた慟哭は、「むきだしの、というには過剰で鬼気迫るものがある」、「日記の中で中井は書きえないものに直面している」と評している。

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