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ホームシックとストレスで体重10キロ増 3/9

  松尾 英里子 / 白鳥 美子

 指定された留学先は、南カリフォルニア大学。授業が始まるのは9月だが、瀬古さんは5月に渡米。大学入学前の準備として語学学校に通う以外は、自主練で走るだけの毎日だった。
「寂しくてホームシックにかかりました。ストレス解消のために食べてばかりで、気づいたら10キロほど太ってしまっていたんです」
とても長距離を走れる身体ではなくなってしまった。自分がつぶれていくのが分かる。この先、いったいどうなるんだろう。早稲田に入って陸上を続けたかったのに。
「将来が不安で、毎日、泣いていました」
早く、日本に帰りたい。アメリカに来るんじゃなかった。受験勉強に身が入るわけもなく、ただただ帰国予定の2月を待ち侘びた。 大学の授業が始まった9月以降も、その気持ちは変わらなかった。寮で同室のアメリカ人は、同じ陸上部なのに、毎夜遊び歩いて、深夜に帰ってくる。
「こっちは朝練のために、夜は10時に寝て、朝は6時起き。早朝に鳴る目覚ましの音を、うるさい!と怒鳴られたことに腹が立って、その後一切しゃべらずに過ごしました」
だから、ずっと孤独だった。
毎日走ってはいたが、体重が増えた体は、30分走ると休憩を要する。30分ごとに公園のベンチに座って、不安で泣いた。また走って、また泣いた。帰る日を待つだけの日々。
唯一の楽しみは、「お袋からの手紙だけ」だった。
「読むたびに、泣きました。早く帰りたくて、ずっと泣いていました」





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