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連載 あなたの地方自治 | 第一回 変えたい、その男女「不」平等!(上)

 これから「地方自治」について連載を始めたい。「地方自治」と言ってもピンとこない、実感できない、という人も多いと思うが、実は身近な市区町村では、いろいろな問題が直接見えやすい。その浮かび上がってくる問題をどう解決するか―これが日本の将来を決めることになる。


●「育メン」と言うけれど

 最初のテーマは「男女平等」。最近は街で、ごく自然にベビーカーを押したり、赤ちゃんを抱っこしたりする若いお父さんの姿を見かけるようになった。素敵な光景だ。ただ、「育メン」という言葉があること自体、男性の子育てがまだ当たり前になっていない証拠だろう。
 職場で若い男性が会議を中座し子どもを保育園に迎えに行くと、「○○君は育メンやって偉いね」と皆が称賛する。しかし、女性が中座すると「だから女に大事な仕事は任せられない」となる。こうした女性からの指摘はその通りだと思う。
 そもそも日本の男女平等は世界153国中121位(世界経済フォーラム調査2019年)で先進国最下位だ。アジアでも中国、韓国より下だが、日本の男女平等がいかに建前だけか、市区町村では手に取るように分かる。


●男女混合の名簿でひと騒ぎ

 私が千葉県我孫子市長を務めていた1999年、市内小中学校のクラス名簿を男女混合にする(児童・生徒の名前を50音順に男女入り混じって並べる)ことにした。当時はまだ、男子が先、女子が後に並ぶ名簿が当たり前だったが、常に男子が先は変だと思ったからだ。県内初の取り組みだった。
 私が市教育委員会に協力を求めると、「体育など男女別々に行うので、名簿が混合だと学校が混乱する」と否定的だった。
 私は納得できなかったが、教育委員会がどうしても無理だと言うので別の提案をした。「男女を分けていいが、1、3、5年の奇数学年は女子が先、偶数学年は男子が先の名簿にする」という案だ。教育委員会は「学校に男女差別の意図は少しもない」と説明していたので、これなら問題ないはずだった。


●数日で見解が正反対に

 ところが数日経ち、「男女混合名簿は可能」と急に教育委員会の見解が変わった。私は少しカチンときて「学校が混乱すると心配しているのではないか。それなら女子先名簿でいこう」と迫った。すると教育委員会は「絶対に混乱しない」と言う。なんと数日で立場が逆転した。
 なぜか?「女子が先になるくらいなら混合のほうがまし」ということだろう。


●ちょっとおかしな婚活イベント

これは我孫子市のことではないが、最近、婚活イベントを開催する市町村が増えた。その参加要件を見ると、そのまち在住の男性と全国の女性としているところが多い。あくまで「嫁取り」「嫁探し」で、女性はどこまで行っても「嫁」なのだ。そんな息苦しい地域社会だから、女性が出ていってしまうのではないか。


●女性が夫を連れて帰ってくる

 そもそも、結婚すると女性は男性のもとに嫁入りしてまちを出ていき、男性は自分のまちで嫁を取って人口が増える、という発想が時代遅れだ。
 私は現在、兵庫県川西市のまちづくり計画作成の専門家会議の会長を務めている。川西市の大きな特長は若い夫婦の転入が多いことだ。統計でも30歳代と0~9歳の転入が転出を上回っている。
 子どもができた夫婦が、子育てしやすいからと妻の親の近くに転居するケースが目立つ。つまり女性が夫と子どもを連れて故郷に戻ってきているのだ。


 市町村では今、建前ではない本気の男女平等が問われている。これについて次回書きたいと思う。
(つづく)

福嶋 浩彦

中央学院大学教授/元我孫子市長/元消費者庁長官

中央学院大学教授・ 元我孫子市長・ 元消費者庁長官。鳥取県生まれ、63歳。
1995年、38歳で千葉県我孫子市長に。3期12年務め、その間、市民自治を理念とした自治体改革を推進し、全ての市補助金の市民審査、常設型住民投票条例の制定、市民債による自然環境保全、提案型公共サービス民営化などを実現した。全国青年市長会会長。福祉自治体ユニット代表幹事。
市長退任後は中央¬学院大学教授。2010年から消費者庁長官。東日本大震災の原発事故のもと、自治体と連携し食品の安全確保に取り組む。2年間の任期を終え大学に復帰。著書に、『最先端の自治がまちを変える』(朝陽会)、『市¬民自治』(ディスカヴァー携書)、『公会計改革』(共著・日経新聞社)、『市民自治の可能性』(ぎょうせい)など。

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