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連載 あなたの地方自治
第四回 人口減少にどう向き合うか

中央学院大学教授  福嶋 浩彦

 これから50~60年は、出生率が上がっても、日本全体の人口は確実に減る。団塊の世代ジュニアが高齢化して子どもを産む世代から外れ、子どもを産む世代自体が大きく減るからだ。

●人口の奪い合いに未来はない

 そんな中、ほとんど全ての自治体が「わがまちの人口減を食い止めたい」と言っている。「わがまちの人口減を小さく」しようと思えば、「他のまちの人口減を大きく」しなければならない。結局、「地方創生」の掛け声のもと、自治体同士が人口の奪い合い=つぶし合いをやっている。こんな先に地域の未来はない。
 「人口が減っても住民が幸せになれる持続可能な社会の仕組み」を作らねばならない。多くの分野で共通するのは、上手く小さくして質を高めることだ。

●公共施設は同じように建て直せない

 公共施設を例に考えてみよう。全国の自治体で、文化ホール、学校、体育館、コミュニティセンターなどの老朽化が進んでいる。高度成長期に集中的に整備された公共施設は、2020年代に一斉に更新時期を迎える。
 しかし、かつて公共施設建設に投資されていた予算は、今では介護や子育て支援などに回っている。老朽化施設を従来と同じに建て直すお金はない。
 ではどうするか。まず一つは、発想の転換による自治体を越えた共有化だ。
 これまで住民も行政も、隣の自治体にある施設は自分の自治体にも欲しいと考えた。隣市に音楽ホールがあると、「わが市でも熱心に音楽活動をする人たちがいる。建設してほしい」と住民要望が出され、行政も実現したいと考えた。これからは「隣市にあるのになぜうちにも造るのか。一緒に使えばよい」と、逆に考える。

●学校は地域の複合センターに

 二つには、公共施設を複合化してまとめたい。
 とくに各地区の中心にある学校は子どもの施設という概念を捨て、コミュニティや福祉、スポーツなどの「住民の総合拠点」と考える。ただし子どもは一番大事なので、中心に置く。
 その際、学校長に管理責任を全て押し付けるわけにはいかない。私が千葉県我孫子市長だった時、学校の管理者を平日の昼間は学校長、平日夜間と休日は市長にしたいと考えた。ただ、法律の制約があり特区(地域限定の法律緩和)を申請したが、当時の文部科学省は受け入れなかった。国にもこのくらいのことは当たり前に実行する発想の転換が必要だ。

●数は減らし、社会的機能は維持

 三つには、民間との連携を徹底して進めたい。
 例えば、住宅の絶対数が不足していた時代は、行政が公営住宅を建て低家賃で提供しないと、住む家がない人が生まれた。
 現在、貧困の問題はあらためて深刻だが、住宅数は不足どころか「空き家」が問題になっている。行政が民間の賃貸住宅を借りて公営住宅として提供したり、低所得世帯に家賃補助したりすれば、老朽化した公営住宅を建て替える必要はない。
 公共施設に民間の資金やノウハウを活用するPFI(Private Finance Initiative)の手法も、もっと豊かにしていく必要がある。
 これら三つによって、建物としての公共施設は思い切って減らしながら、公共施設が社会の中で果たしてきた機能は維持し、質を上げていくことができる。

●利用者以外も「自分ごと」に

 そのために大切なのは、住民の合意づくりだ。
 これまで行政は、その施設の利用者(文化ホールなら文化ホール利用者)だけから意見を聞いてきた。利用者しか関心がなく、それ以外の人は意見を出さないからだ。
 利用者の声=住民の声になってしまうと、文化ホール利用者は「文化は重要で文化ホールだけはこのまま存続させ、建て替え時にさらに充実を」と主張する。体育館利用者は「健康づくりは重要だから」、福祉センター利用者は「少子高齢社会の福祉は大切だから」と、すべて同じだ。
 これからは文化ホールを1回も使っていない人も、他人ごとでなく「自分ごと」として、納税者の立場で文化ホールの議論に加わることが不可欠だ。その方法については次回に書きたい。

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