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連載 あなたの地方自治
第七回 役割を果たしていない自治体議会!?

中央学院大学教授  福嶋 浩彦

●住民の合意を作る役割

 様々な立場の住民が話し合い、合意を作り出すことが自治にとって大事であると前回述べた。
しかし、地域や行政の全ての課題について、常に住民が深く議論し、住民投票で決めるわけにはいかない。そこで、住民が選挙で議員を選び、住民の様々な立場、利益を反映した議員が住民に代わって話し合い、決定する。
 議会の最大の役割は、住民に代わり日常的に議論し、住民に代わり住民の合意を作り出す(議会なので最終的には多数決)ことだ。

●議員同士なぜ議論しない?

 問題は、議員同士が住民に代わって議論しているかだ。残念ながら、個々の議員が自分の支持者の要望を受け、その実現を首長・行政に迫るだけ、ということが多い。
A議員は、学校の改修を首長・行政に要求する。B議員は、コミュニティセンター建設を要求する。C議員は地域の道路整備を要求する。
 支持者の要望を取り上げるのは当然だが、首長・行政へ要求するのではなく、議員同士で徹底議論し、どういう選択をするか結論を出し、その結論で行政を動かして欲しい。それが本来の議会の仕事だ。
 しかし、A議員はB、C議員の要求が適切ではないと考えても、それを指摘しない。B、C議員が首長・行政へ要求する邪魔はしないのだ。そのかわり「自分が支持者の要望の実現を求めるとき邪魔しないでね」と思っている。それぞれが支持者に良い顔をするための助け合いなのだろうか。
 右肩上がりの時代は、各議員の要求の多くを実現できた(結果として無駄と借金を増やしたが―)。しかし、人口減少社会では、B・C議員の要求を実現したらA議員の要求は実現できないという関係になる。選択の議論が必須だ。
 各議員が自分の支持者の要望実現を首長・行政へ迫るだけなら、結局議会は、従来通りの発想で行政サービスの拡大を求める存在になる。うまく小さくして質を高めるのが人口減少社会の課題だから、議会は時代から取り残されるだろう。

●議会は行政の監視「機関」ではない!

 議会は行政の「監視機関(チェック機関)」と言う人がいるが、議会は自治体の「意思決定機関」だ。条例、予算などは全部、議会が議決する。そのうえで議会は、首長・行政が議会の決定に基づき、その趣旨を生かして実行しているか、「意思決定機関」として行政を監視する。
 監視機関なら、議員がそれぞれ首長・行政を追及したり要求したりして、一応役割は果たせる。しかし合議制の意思決定機関なら、議員同士が議論しないと意思決定できない。

●14年経った栗山町の基本条例

 2006年、北海道栗山町で日本初の議会基本条例が制定された。同条例は議会を「議員による討論の広場」と位置づけ、「議長は、町長等に対する本会議等への出席要請を最小限にとどめ、議員相互間の討議を中心に運営しなければいけない」と定めた(第9条)。まさにこれが自治体議会だ。
 栗山町議会の制定から14年が経ったが、議員相互の議論を中心とする議会運営は広がっていない。なぜか。議院内閣制の国会と、自治体議会の根本的違いを理解できていないのではないか。この点については次回に書きたい。

●無作為抽出による議員選出も!!

 議員は結局、議員同士の議論を横に置いたまま、「市長に掛け合って支持者の要望を実現させた」「行政に対し間違いを追及し是正させた」といった対首長・行政での個人成果を誇り、選挙の票に結び付けている。
 選挙向けアピールが本来の議員同士の議論を妨げるならば、いっそ自治体議員を選挙で選ぶこと自体を見直したらどうか。全国の自治体で、無作為抽出の住民による充実した議論が行われている。「議員は選挙する」と定めた憲法93条を改正し、少なくとも議員の半分は住民から無作為抽出で選んだほうが、まっとうな議会になるのではないか。今日、「くじ引き民主主義」という言葉も登場してきている。
 こんな提案をしなくて済むように、まずは自治体議員の奮起を期待したい。

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