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Here we GO !

テレビ屋 関口 宏

 とうとう7月になりました。延期を決めてから1年3ヶ月。オリンピックはこのまま開催される方向に進んでいます。
 これで良いのか、私には、はっきり言って判りません。自分の気持ちを素直に表すなら、世論調査に似たような「3割3割3割」になってしまいます。つまり「オリンピックを観たい」「延期した方が良い」「返上すべき」が同じ割合で、私の想いの中に同居しているのです。それはなぜなのか。「観たい」も「延期」も「返上」も何となくそう思ってしまうだけで、どの道にも、確たる裏付け、つまりエビデンスがないからなのでしょう。エビデンス=根拠、証拠。これも今回のコロナ騒動の中で盛んに使われるようになって市民権を得た言葉になりました。

 しかし新型コロナウイルス関する様々な状況に関しては、政治家も役人も、強いて言えば医療関係者も、「絶対」と言い切るだけのエビデンスには、まだ到ってはいないのではないでしょうか。人類が初めて遭遇したウイルス。変異株も現れ、まだまだ先が読めない謎だらけゆえに、誰もが「こうあるべき!」を断言できないものと思われます。

  昨年3月、オリンピックの延期を決めた時、日本では、まだ今ほど感染者は出ていなかったと記憶します。しかし中国から始まった世界的な感染爆発(パンデミック、この言葉も今回のコロナ騒動の中で知りました)を見て、「延期」という英断を下しました。そしてそれは多くの人に当然のことのように受け入れられ、私にも何の異論もありませんでした。やがて日本でも感染拡大が始まり、気温、湿度が上がれば、インフルエンザのように感染は落ち着くという見方は見事に裏切られ、「延期しておいて良かった」と思われたのでした。


 そして一年。第4波がまだ収まっていない中でのオリンピック開催への道。昨年とは打って変わって世論は割れ、人々の意見は右往左往しています。オリンピック関係者は危険を承知の上で、それでも開催を望みます。医療関係者はなるべく人流を抑えるよう警鐘を鳴らすものの、「中止」には言及しません。というより、議論百出すれども、開催ありきで全てが動いているのでしょう。総理がG7で各国の首脳に協力を要請し、首脳達も協力を約束したあたりから一気に開催への弾みがついた形になりました。

 しかし先ほどお話ししたように、この出来事の結末は誰一人として判らないのです。「絶対」はまだ今のところ存在しません。ひょっとしたら、感染者が続出して途中中止もあるかもしれません。逆に何事もなく、コロナに打ち勝った素晴らしい大会になるかもしれないのです。誰にもその結末は判らない、大きな賭けに出ようとしているのです。

 そんな中、相変わらず「3割3割3割」に揺れる私ですが、この一年気になってきたことがあります。それはコロナ延期にともなって、一年後には少しでもコンパクトにした大会にしようと言っていたはずなのに、その後そうした情報を聞かないことです。

 そもそもオリンピックの東京招致は、東日本大震災の復興が大きなテーマだったはずですし、その時もコンパクトな大会にする案が出ていたように記憶しています。
 それがいつの間にか競技数も増え、スケールの大きな大会になっていったような気がしますし、この一年、それは修正されなかったように感じています。そして、その広げ過ぎてしまったどこかが、複雑なコロナ対策の足枷にならなければいいがと思っているのです。
 7月に入る直前、IOCのバッハ会長に日本はゲキを飛ばされました。
        「Here we Go !」

 テレビ屋  関口 宏

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