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【新聞コラム特集】
日本経済新聞・春秋(2021年11月12日)

 独立メディア塾 編集部

 99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さんは2007年から約5年間,本紙に毎週「奇縁まんだら」を連載していた。物故した著名人らとの交友を、豊富なエピソードで振り返っている。とりわけ同じ文学の道を歩む人らとの出会いと別れ、憧れや畏怖を描く筆致がさえていた。(日経は文字を追い込みにせず、連続させなかったために、次の▼までの空間を気にして空きをできるだけ自然に見えるようにしている)
▼彼女の初期の作品を酷評した評論家、平野謙の回では、後になって「私の批評がまちがっていましたね」と明かされたと記す。平野の滑稽なまでの生真面目さも暴露し、ちょっとした意趣返しもみえる。長年、不倫関係にあった作家の小田仁二郎の描写には、まだ思いが残っているような、つやめいた余韻が漂っていた。
▼祝杯も干したが、苦汁もなめ尽くし、出家した後も、聖なる世界と俗界を自在に往還した生涯だった。深く、そして広い経験からほとばしる言葉は、老若を問わず、女性を中心に多くの心を癒し励ました。作家や社会運動家の評伝に加え、70歳を過ぎてからの「源氏物語」の現代語訳は、文学史に刻まれる偉業であろう。
▼評価の定まった最晩年になっても、かつて愛人だった作家の娘、井上荒野さんに、往年の関係を明かして小説の素材を提供し、耳目を集めた。「恋は雷が落ちてくるようなもの」。奔放で、とらわれない物言いは、もう聞くことがかなわない。語り部であり、人生の灯台のようであり、そして世代を超えたアイドルだった。

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