コロナ・オリンピック・そして8月
テレビ屋 関口 宏
歴史に詳しい作家の保阪正康さんと続けている『もう一度近現代史』(毎週土曜日・昼12時よりBS—TBS)は2年前、大政奉還・明治維新から時系列に歴史を追いかけてきましたが、そろそろ太平洋戦争、日本の敗戦をお伝えするところに差し掛かっています。
たかだか150年ほど前、まだチョンマゲを結っていた日本人が、欧米列強から日本を守るため、新国家建設に奔走した明治維新。その中心となった人々のエネルギーの高まりは、今の私たちには想像もつかないものだったと思われます。またそのエネルギーを湧出させた時代の空気も、今とは全く違うものだったでしょう。そしてその勢いが、日清、日露へと繋がり、さらには満州事変、支那事変(日中戦争)、太平洋戦争へ突入して、新しく作られた大日本帝国は、80年足らずで、あっという間に瓦解したのです。
維新スタート時のエネルギーはどこかで変質してしまったのでしょうか。この悲惨な結末は誰一人望むものではなかったはずです。多くの歴史専門家は、日清、日露の勝利によって指導者も、また国民の多くも、増長、傲慢になっていったのではと推測しています。
そして真珠湾奇襲攻撃(日本時間 1941年12月8日)から、玉音放送が流れた1945年8月15日までの3年半、時系列に出来事を並べてみると、講和によって戦争を終結すべき時は何度もあったような気がしてきます。
日本の勢いの良かったのは真珠湾攻撃から半年ほど。東南アジアの国々、南洋の島々を、次々日本の傘下に取り込んでゆきます。国内の空気も、やれ行けそれ行けになっていったようです。
しかし、1942年6月、真珠湾攻撃からわずか半年後、ミッドウェー海戦によって多くの主力艦船、航空兵器を失った日本は、早くも劣勢に回ることになります。
その後ガダルカナルに始まった南洋諸島の戦いは、ほとんど勝ち目のないものになり、ここでも講和を考えるべき時はあったような気がしますし、史上最悪の作戦と言われるようになったインパール作戦(インド・ビルマの国境辺りでイギリス軍と衝突)の失敗の時、グアム・サイパン陥落の時、レイテ沖海戦で日本海軍が壊滅的打撃を受けた時等々、戦争終結を考えるべき時はあったと思われます。
しかし戦争は続きました。本土決戦、一億玉砕を叫びつつ、沖縄は捨て石にされ、広島・長崎の原爆投下を経て、犠牲者の数は終戦間際に増大していったのです。
玉音放送
1945年8月15日。廃墟の中に流れた玉音放送。明治維新でほとんどゼロからスタートした新しい日本は、80年もたずに、再びゼロに戻ったことになりました。そして2021年の今年、その再スタートから76年。同じくらいの時が流れたことになりますが、果たして歴史の教訓は生かされているか。
コロナとオリンピック・パラリンピックが重なる中の夏、8月です。
(尚、『もう一度近現代史』とは別に、8月15日、15時30分よりTBS 終戦特番,『戦後76年「つなぐ、つながる」SP へいわとせんそう 〜戦場からのメッセージ〜』放送予定)
テレビ屋 関口 宏
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