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プーチン・デジャブ

テレビ屋 関口 宏

 まるでデジャブ(既視感)を体験しているようなここ1ヶ月です。このメディア塾3月号のコラムをアップした2月末の段階では、ロシアのウクライナ侵攻はまだ始まっていませんでした。それがあっという間にウクライナ領内に攻め込んだロシア軍。当初、戦力はどうみてもロシア軍の圧倒的優勢と見られていたものの、ウクライナの抵抗も激しく、3月30日現在、決着はついていません。(ただ戦争というものは、どこで展開が変わるか見当がつきませんので、このコラムをお読みいただく時点で、戦況は大きく変化しているかもしれません)

 それにしましてもプーチンという人が、何を考えてこの大愚挙に出たのか。

 彼の脳裏に染みついた、崩壊前のソビエトの記憶。いわゆる西側の NATO(北大西洋条約機構)と、対等に向かい合っていたソビエト中心の東側のWPO(ワルシャワ条約機構)。それはソビエトにとって、またプーチンにとって、第2次世界大戦後の誇らしき時代だったのでしょうか。

 しかしベルリンの壁が崩れ、ソビエトが崩壊すると、 WPO(ワルシャワ条約機構)の加盟国が次々抜けて、プーチンの中に焦りのようなものが出てきたのかもしれません。しかもすぐ隣のウクライナまでがNATOに加盟しようとする動きは、何が何でも抑えこまなくてはならなくなったようです。

 冒頭で述べたデジャブ(既視感)とは、様々な要素は異なるにしても、このあたりの根底に流れる共通感なのです。つまり、前月(3月)のコラムには、 BS—TBSで続けてきた『近・現代史』が3月一杯で幕を降ろすにあたり、明治維新から約80年で作り上げてきた大日本帝国が、無残な敗北を喫した流れを、作家の保阪正康氏にまとめていただいたのですが、大日本帝国の大きな曲がり角は、その日本の傀儡国家・満州国建設にあったのではないかという見解でした。
 そしてそこで考えられていた国土の守り方。まずは主権線。いわゆる国境線の内部をしっかり固め、そしてその主権線の外側の、ある一定の地域(利益線)も抑えておかなければ安心できないとする考え方です。


BS-TBS「関口宏のもう一度近現代史」より

 大日本帝国はまず日韓併合に成功し、さらにそこを守るために、その外側、満州国建設に走りました。その頃から大日本帝国は、世界から相当危険視されるようになりましたが、大日本帝国は「国際連盟」を脱退。世界を敵に回しながらも満州国建設に突き進み、そして敗戦への道を歩むことになりました。

 今回のロシア・プーチンも、世界を敵に回しながらも強引に隣国ウクライナに攻め込み、自ら首を絞める状況に追い込んでいるように見えます。どう考えても、この戦争(プーチン及びその周囲の人たちは、「これは戦争ではない」と言い張っていますが・・・)は、国連憲章、国際法を無視したもので、21世紀の今、断じて許されるものではありません。プーチンもその周辺も「戦争」と言ってしまえば国連憲章・国際法に違反することを知っているのでしょう。
 思えば大日本帝国も「戦争」を「戦争」とは言わず、「支那事変」「満州事変」と言い張ったデジャブが起こりました。

 そしてロシア軍の侵攻が当初の作戦通りに進まず、停滞する場面も出てきた原因を、専門家は「兵站」の失敗だと言いました。「兵站」の失敗。これがまたデジャブになりました。大日本帝国敗因の大きな要素が、この「兵站」の失敗だったのです。人員・兵器・食料の後方支援が上手く行かず、インパール作戦をはじめ、南方の島々でも玉砕が相次ぎました。

 そんなデジャブ(既視感)を伴いながら今回のロシア・ウクライナ問題を見ておりますと、一層「戦争」の愚かさ、悲惨さを感じるのですが、今回はそれに加えて「情報」の危うさが心配されます。
 戦争の大きな武器は「情報戦」だと言われ、大日本帝国の戦争でも、敵味方共々、プロパガンダの応酬を繰り広げたのですが、今回のロシアの戦略では、AIの発達によって、誰もが本物と間違えてしまいそうな偽映像・偽情報が簡単に作られ、ネット・ SNS等によって簡単に流されるようになっています。そしてロシア国民がロシアの作るフェイク(偽情報)に振り回されています。
 こうした複雑怪奇な情報戦をどう考え、その危険性にどう取り組めば良いのか、難しい時代になりました。

 そして今回のプーチンの大愚挙は、どう締めくくられるのか。そして21世紀がどんな時代になってゆくのか、今、世界が問われている気がしています。


 テレビ屋  関口 宏

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