ウクライナ・ナワリヌイ・コロナの夏
テレビ屋 関口 宏
ロシアがウクライナに侵攻を始めて4カ月。劣勢と思われるウクライナ側の強い抵抗が、様々なメディアを通じて伝えられていますが、本当の戦況はなかなか掴みきれません。多くの専門家が指摘するように、状況がさらに悪化しながら、長引く方向に進んでゆくのでしょうか。
先日、秀逸なドキュメンタリー映画を観ました。
『NAVALNY・ナワリヌイ』。副題が「プーチンが最も恐れた男」とあるように、反プーチン政権の活動家・アレクセイ・ナワリヌイ氏のドキュメント。
2020年夏、シベリアからモスクワに向かう飛行機の中で、突然瀕死の状態に陥り、病院に緊急搬送され一命を取り留めたものの、毒物・ノビチョクが使われた殺人未遂事件として世界を震撼させました。
映画「ナワリヌイ」
© 2022 Cable News Network, Inc.
A WarnerMedia Company All Rights Reserved.
Country of first publication United States of America.
そのナワリヌイ氏が、CNN Filmsというメディアのカメラとともに、ロシア政権の暗部に迫る作品。おそらく、今回のロシアのウクライナ侵攻前に撮られた作品だと思われますが、逆に、侵攻後の今だからこそ、ロシアという国が、またプーチンという大統領が透けて見えてくる感覚になりました。
画面から受けるナワリヌイ氏の印象は明るく感じましたが、その後のナワリヌイ氏が気がかりです。再入国した際、当局の役人に連れ去られた後の消息はわかりません。今回のウクライナの状況と合わせて、ロシア政府がどう扱うのか、見守りたいと思います。
一方新型コロナの感染状況は、7月に入るや急増。7月8日現在、第7波が始まったのでは?と言われ始めました。
以前このコラムに書かせていただいた「スペイン風邪」。100年ほど前、第一次世界大戦中、世界中にパンデミックを引き起こし、5000万人ほどの犠牲者を出して、それが世界大戦終結に結びついたと言われています。その「スペイン風邪」が、原因不明(電子顕微鏡もなく、医学がそれほど進んでいなかった時代)のまま、2年半から3年で終息したそうです。
さらに遡ること1300年ほど前。第45代聖武天皇の奈良時代には、天然痘と思われる感染症が広まり、当時500万人ほどだったと思われる日本の人口の25パーセント、つまり4人に1人が犠牲になったと伝えられています。(現在放送中のBS—TBS『一番新しい古代史』毎週土曜日・昼12時にて、この辺りのことを取り上げました)。この時も、感染症の何たるかがまるで分からないまま、2年半から3年ほどで終息したと伝えられていて、私が不思議に感じる出来事になりました。
2年半から3年・・・・。今回もその辺で収まって欲しいと、願っていたのですが・・・・・。
それにしましても、第45代聖武天皇という方は、当時の治世に相当苦労されたようです。原因不明のパンデミックにより4人に1人が死んでゆく中、飢饉、大地震にも見舞われ、都(平城京)にじっとしていられぬようになって、彷徨の旅に出ることになりました。それも、5年もの間、あちらへこちらへと彷徨われ、神仏にすがる想いの中で、全国に国分寺・国分尼寺の建立を考え、そしてついには、あの東大寺の大仏造立を決意するのでした。
奈良大仏
高校の修学旅行であの大仏を観て、何でこんな大きなものが必要だったのか良く理解できませんでしたが、今考えますと、聖武天皇のおかれた心境が分かるような気がします。
そして、ウクライナの終結、ナワリヌイ氏の無事、コロナの終息を願う長い夏が始まりました。
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追伸
今月のコラムはコロナの急変を受け、7月8日に更新せざるを得なくなりました。何とか早く収まることを願っています。
テレビ屋 関口 宏
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