天皇のお言葉と人間宣言
 独立メディア塾 編集部
天皇はご自身のことを「朕(ちん)」といった時代がありました。「朕」というのは広辞苑によると、「『天子』の自称。古く中国では一般に『われ』の意に用いたが、秦の始皇帝に至って天子に限定して用いるようになった」ということです。
参考に第二次大戦が始まった1941年(昭和16年)12月26日に開かれた第79回帝国議会の天皇の「勅語」を開いてみましょう。現代の私たちには難しすぎますが、主語は「朕」です。開会宣言をして、戦争の目的を達成するために臨時軍事費の予算案を出すから審議せよ、と命令しています。
次いで大戦に負けた1945年8月15日正午のいわゆる「玉音放送」を見てみましょう。大戦開始から4年後です。戦後日本を考えるうえで重要な放送ですから、全文を参考に載せますが、天皇の言葉として1945年までは「朕」が健在であることを確認してください。玉音放送の冒頭部分は次の通りです。
ところがさらに2年後の1947年(昭和22年)6月23日に開かれた第一回特別国会では「朕」は消えていました。「わたくし」が主語になっています。次の文章です。
「本日、第一回國会の開会式に臨み、全國民を代表する諸君と一堂に会することは、わたくしの深く喜びとするところである。
日本國憲法に明らかであるように、國会は、國権の最高機関であり、國の唯一の立法機関である。したがつて、わが國今後の発展の基礎は、一に國会の正しい運営に存する。(以下略)」
昭和天皇が戦後第一回の国会開会式で述べた「おことば」は、第1回から第15回までは「勅語」と呼ばれ、第16回から第35回までは「御言葉」、第36回以降は「おことば」に改められたそうです。 「全国民を代表する諸君」も、現在は「皆様」に代わっています。
これらの変遷は新憲法下での「人間宣言」と無縁ではありません。1946年1月1日の年頭詔書で自らの神格を否定されたことで、用語も国民に近づいた、と言えそうです。三島由紀夫は「人間宣言」に反対し、「英霊の声」という作品で「などてすめろぎは人間(ひと)となりたまひし」という絶叫を繰り返しています。
(編集部)
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