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戦争を伝え続ける

テレビ屋 関口 宏

 「“敵”の子どもたち」というドキュメンタリー映画を観ました。
 母親と共にイスラム教に傾倒、改宗したスウェーデン人の娘が、ISIS(イスラム国)のメンバーと結婚し、子供も連れてシリアに密航。その後、掃討作戦に巻き込まれて夫婦ともに死亡。残された子供達の行方を案じる祖父が、危険を侵しながらシリアの難民キャンプを転々と探し回り、孫たちをスウェーデンに連れ戻す姿を追った作品です。


監督・脚本:ゴルキ・グラセル・ミューラー
配給:ユナイテッドピープル
2023年9月16日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー

 ここしばらく私たちの目は、ロシア・ウクライナに釘付け状態になっており、まだ終わっていないシリア・ISIS問題を、「忘れないで!」と言われた気がしました。中東・アフリカをはじめ世界には、未だ平和になれない地が50ほどあると言います。そこには必ずと言っていいほど、子供たちの犠牲がつきまとっています。

 そして8月。

 日本人として忘れてはいけない6日・広島、9日・長崎、15日・敗戦。
あれから78年の月日が流れました。(8月ではありませんが、6月23日・沖縄の日も大切です。)

 あの戦争でも多くの子供達が犠牲になりました。直接戦火に巻き込まれるだけでなく、「戦争」は子供ですら徹底的に利用しょうとします。学校の授業が、軍需工場の仕事に変えられた子供達の映像をご覧になった方もあると思います。また「少年兵」と呼ばれる戦争兵器は、未だ世界の至るところに存在しています。今回のロシアによるウクライナの子供達の連れ去りには、どんな目的があるのでしょうか。

 毎年8月は、テレビの終戦特番が放送される時でもあります。が、残念ながら最近は少なくなりました。終戦から78年もたちますと、戦争体験者や語り部がほとんど生存されていない状態になり、証言も取れず、製作者も四苦八苦する状態になっているのです。

 ですから、戦前・戦中の映像をたっぷり保存しているNHKはその映像を駆使した作品をまだ作り出せているのですが、民放は敵いません。そしてテレビをご覧いただく視聴者の側にも戦争を知る人がほとんどいなくなり、いわゆる視聴率も取れなくなってきていることも、終戦特番が減ってきている大きな原因なのです。

 しかし、それはいけないと思うのです。メディアの大事な使命の一つは、戦争を伝え続けることです。戦争のない平和な世界を望むなら、戦争の実態をメディアは伝え続けなければなりません。戦争を知らない世代が増えれば増えるだけ、その使命は大きくなっているのです。

 その想いを共有する若きスタッフが、今厳しい取材を続けています。

8月12日(土)15時30分〜(一部地域を除く)  
TBS終戦特番 「戦争と子どもたち」



 テレビ屋  関口 宏

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