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テレビは今・・・・

テレビ屋 関口 宏

 陽春の4月。一昔前なら我がテレビ業界は、春スタートの新番組のお披露目を華やかに競い合った季節なのですが、いつの頃からかお祭り気分も薄れ、一つの番組の始まりと終わりがはっきりしなくなりました。それは業界の勢いが衰えてきた現象、と捉えるのは強引すぎるかもしれませんが、テレビも世の中の流れの中で、変化せざるを得ないものを抱えているのです。

 特にこの春は、視聴率が悪くもないのに番組が終わってしまったり、出演者が代わってしまったりする不思議な現象が相次ぎました。その大きな原因はやはり新型コロナウイルスのようです。コロナ禍で多くの人がステイホームを強いられ、テレビの視聴率が上がるかに思われたものの、地上波やBSはそれほどでもなく、ネットやSNS、さらにはYouTube、Netflixなどにお客が流れてしまったようです。


そして各局、営業成績が落ち込む中、制作費を切り詰め、採算の取れない番組はそれなりの手を打たねばならなくなります。成績は悪くないのに採算が取れずに打ち切った番組があったということは、それだけテレビ局の「ゆとり」がなくなっていることを示しているのかもしれません。

 そしてもう一つ、最近のテレビ界に大きな変化の要因が出来てしまったのです。以前にもこのコラムで多少触れたことがあったと思いますが、テレビの成績を表す物差しが変わってしまったのです。これまで当たり前のように使われていた「世帯視聴率」がさらに細分化され、「世代別視聴率」なるものが登場して、ターゲットを細かく絞り込むようになったのです。つまり家族単位から個人単位の情報に変わり、しかも多くのスポンサーが望むターゲットが、13歳から59歳(局によっては49歳というところもあるそうです)までの視聴者を重視するようになったのです。この層をFコアとかコアターゲットと呼んで、ここの数字を競い合うテレビ業界に変わってしまったのです。

 「最近、テレビがつまらない」という年配の方の声をよく耳にするようになりましたが、その原因はこの辺りにあるのでしょう。とにかくFコア視聴者(若者層)を取り込もうとする番組製作者は、年配者には理解不能と思われても、若者指向型の番組作りに走ります。世代間ギャップはいかんともし難く、年配者はどんどん置いていかれることになっているのでしょう。

 ではなぜスポンサーはこの層に的を絞るのか。それはこの層がスポンサーの狙いに反応してくれる世代、つまり直に買い物をする世代を意味していて、13歳とは、お小遣いを使えるようになる年代と考え、60歳以上(50歳以上と考える局もあります)はあまり買い物をしない世代と捉えているからなのです。つまり年配者は、若い世代ほど頻繁に買い物をしなくなるというデータがあるのだそうです。
 でもだからといって・・・・・これでいいのか、変な疑問が残ります。


 それは、日々テレビをご覧いただいている視聴者の多くは、60、70、80代の年配者だというデータもあるからです。その層を切り捨てて、果たしてテレビは成り立ってゆくのでしょうか。また一方ではテレビを持たない若者も増えているといいます。テレビから逃げてゆく若者を追いかけて、テレビを必要としている年配者を切り捨てる。どこか矛盾しているように思えてなりません。

 テレビが登場して、映画も新聞もテレビに抜かれる現象が起こりました。そしてそのテレビもネットに抜かれる日が来ると言われ始め、このコロナ禍はそのスピードを早めてしまったようです。テレビを生業としてきた身には辛い時代になりましたが、でも、テレビにはまだまだ大きな底力が残されていると思われます。それはネットやSNSがまだ届かない「マスコミ」としての存在感、そして波及効果です。

 テレビがその「マスコミ」としての存在感を維持するためには、何が必要か。
それはやはり、視聴者との信頼関係だと思うのですが・・・・・。

 テレビ屋  関口 宏

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