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2020年10月号

大統領の治療費はいくら?

テレビ朝日アメリカ 社長  武隈 喜一

 トランプ大統領は退院が決まった時、Twitterに「あなたの生命を新型コロナウイルスに左右させない。新型ウイルスを恐れることはない」と投稿した。しかし、一般的な米国市民が恐れているのは、決定的な予防法、治療法のないウイルスへの感染以上に、重篤化し入院が長引いた場合の治療費の請求書だ。
 米国の医療費は高い。ヘリコプターで病院まで行き来し、何度もPCR検査を行い、最新の治療薬を投与されたトランプ大統領の入院治療費はいくらになるのだろうか?

  一般人なら1000万円

 米国では健康保険に加入していない人が2000万人以上いる(国民の約8%)。加入していても利用できる病院(In network)の種類、カバーの範囲など、内容は千差万別だ。広範にカバーされる保険だと、1人月額10万円以上の保険料が必要だ。コロナウイルスの治療が保険でカバーされるか否かは、加入している内容、入院先などによるので、自分の保険内容を知らないと、とんでもなく高額の請求書が来ることになる。
 トランプ大統領の治療内容の詳細はわからないが、10月7日付の『ニューヨークタイムズ』紙によると、3日間緊急入院したトランプ氏が、もし大統領でなかったら、1000万円を優に超える請求書が来ることは間違いない、という。
 まずドクターヘリ代が往復で3万8770ドル(約400万円)。

  入手困難な薬は無料

 60歳以上の新型コロナウイルス患者の入院治療費が6万1912ドル(約650万)、治療薬レムデシビル処方代が3120ドル(約32万円)。トランプ大統領に投与されたレジェネロンはまだ実験的な抗体治療薬なので、普通の病院では入手が難しい。投与されてもマーケットに出回る前の「トライアル」なので無料。
 そのほか、入院前後と入院中に大統領はPCR検査を何度も受けたが、公共検査場でのPCR検査は原則無料だが、往診や時間外での緊急検査となると、法外な値段をとられる場合がある。
 ざっと合算しても1000万円を超え、ドクターヘリを使わなかったとしても、700万円以上の治療費が必要だ。しかもトランプ政権は前政権が成立させた低所得者に配慮した「オバマケア」を廃止しようとしている。

(2020.10.07)

武隈 喜一

テレビ朝日アメリカ 社長

1957年東京生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科、
東京大学文学部露西亜文学科を卒業後、出版社、通信社などを経て
1992年テレビ朝日入社。1994年から1999年までモスクワ支局長。
2010年から12年まで報道局長。2016年7月からテレビ朝日アメリカ社社長。ニューヨーク在住。

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