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「感謝祭どう過ごすか」にも政治的分断

元テレビ朝日モスクワ支局長 武隈 喜一

 11月18日には1869人が新型コロナウイルスで死亡し、全米での死亡者が、25万人を超えた。最初の死者が出たのは2月29日とされている。これまでに1100万人の米国人が新型コロナウイルスに感染しているが、11月に入ってからの2週間は毎日の新規感染者数が10万人を超えている。17日の全米での新規感染者数は16万1934人。入院患者総数7万6830人はこれまでで最多となった。日本での11か月間の感染者数をわずか1日で超えている計算になる。
 ロサンゼルスはまたしても夜間外出禁止が発令され、感染率3%を超えたニューヨーク市では、2か月前にようやく再開した学校が、19日からふたたび閉鎖となり、リモート学習に戻る。

  南北戦争50万人、第二次大戦40万人、コロナ…

 死者数が5万人を超えたのが4月25日、10万人を超えたのが5月27日、15万人となったのが7月29日、そして20万人を数えたのは9月22日だった。その9月22日には全米の感染者数は690万人だったが、11月18日には1.6倍の1150万人を超えた。
 南北戦争の4年間の死者が50万人、第二次大戦の死者がこれも4年間で40万人だったことを考えれば、新型コロナウイルスは歴史的な厄災だ。
 製薬会社2社がワクチンの効果を95%以上と発表し、緊急使用許可を申請しているが、健康保健省によれば、年末までには医療従事者を中心に2千万人(4千万回)へのワクチン接種が可能となる。ファウチ博士によれば、健康な人がワクチン接種を受けられるのは早くても2021年4月から7月になるだろうという。もし、そうなれば、秋からは感染前の状態に戻ることも可能かもしれない、とファウチは希望的に語った。

  「団欒がコロナ拡散」の警告

 一方で、まもなくやってくる家族や友人で集まるのが伝統のThanksgiving(感謝祭)の連休について、ファウチ博士は、「家族の元へ行こうかどうか、二度、じっくり考えてほしい。楽しいはずの団欒も、ことに老人がいる場合にはコロナ拡散のホットスポットになりかねない」と警告を鳴らした。
 これに対し、ホワイトハウスのマクナニー報道官は、「専門家のガイドラインはジョージ・オーウェルの描く管理社会の世界だ。この国では自由を失いたくない。健康は個人の責任だ。わたしたちはもうこのウイルスと何か月も付き合ってきて、身の守り方はわかっている。オレゴン州のように、6人以上で集まったら、家を強襲されて逮捕され、30日の牢屋入り、というはジョージ・オーウェルの世界だ。それはアメリカ的ではない。家族と一緒にいるかどうか決めるのは個人の問題だ。それがアメリカのやり方だ。それが自由と言うものだ」と述べて、政府としての方針を出す計画はないことを明らかにした。

  「自由な感謝祭を」と保守派

――というよりも、トランプ政権は、6月以降、「対策」と呼べるようなコロナ対策をなにひとつ打ち出していない。経済再開へと舵を切り、V字回復した経済を背景に選挙を勝ち抜く、というのがトランプ再選へ向けた戦略だったからだ。感染対策は各州知事まかせで、トランプ大統領は、「コロナ・タスクチーム」の会合に出席することも、メンバーから意見を聞くことも、もはやないと言う。死者数が25万人を超えたこの日も、哀悼の意をあらわすことも、今後の指針を示すこともなかった。
 トランプ支持者たちから熱狂的な支持を受けているラジオ・パーソナリティ、ラッシュ・リンボーは「伝統的なThanksgivingの祝日が左派リベラルによって攻撃にさらされている。彼らは新型コロナウイルスを脅しに使ってわれわれの、なくてはならないアメリカ的祝日を無きものにしようとしている」と述べ、マスクを拒否し、経済を軌道に乗せるともに、伝統の感謝祭を自由に家族と祝うことが、リベラル派の仕掛ける陰謀に打ち勝つことだと力をこめて語った。

(2020.11.18)

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