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アフターコロナ

テレビ屋 関口 宏

 「完全に終わりました!もう大丈夫です!」という宣言は出せないのでしょうね、この新型コロナウィルス。
 何をするにも恐る恐る、ちょっとした行動にもブレーキがかかる鬱陶しさ。一昔前なら、少し熱っぽいと思っても「風邪かな」で済んでいたものが、最近ではインフルエンザを疑い、そこに今回のコロナも加わって、さらに疑いが複雑化してしまいました。

 一方では経済が心配だとして、多くの国が規制解除の方向に動き始めています。経済が必要なことは分かるのですが、私の中にはなんとも言えない複雑な想いが交錯するのです。と言いますのは、世界中でロックダウン状態になった時には、中国やインドの大都市で大気汚染が改善され、ヨーロッパでも観光客が激減したことで、観光名所の川や海の水が綺麗になったと聞いたからなのです。

 では世界中で経済活動が再び活発化すれば、また大気汚染、水質汚染がぶり返してしまうのでしょうか。残念ながら現代社会では、経済活動と環境問題は相容れない二律背反の状況にあるようです。

 そこでいつかは沈静化することを願いつつ、このコロナ禍に突きつけられた問題を、今考える時なのかもしれないと思うようになりました。

 そして思い出されたのが「SDGs」。Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)。4、5年前から時々耳にするようになった国際的な活動のことです。環境、水、食料、貧困、差別、エネルギー、教育、産業技術、経済活動等々を17の課題に絞り込み、それこそ地球と世界を持続可能な住処にしていこうという取り組み。このような活動が世界的規模で始まったということは、このまま行けば地球も人類も持続可能ではなくなるという強い危機感があってのことでしょう。ある環境の専門家に聞けば、今全人類が皆、先進国並みの生活をするようになったら、もう一つ地球があっても足らないのだそうです。



 30年以上も昔のことになりますが、テレビで「環境特別番組」に携わったことがありました。南米のアマゾンやニューギニアなど、その頃すでに激しい自然破壊が進んでおり、地球上の大気汚染を表すグラフも急カーブを描いていました。南極の氷が溶け出したのもその頃です。それから30年。私には環境問題が改善されてきたようには思えません。海洋プラスチックの問題などは、最近表面化した新たな問題であり、他にもまだまだ私達が知らない問題が潜在化しているものと思われます。

 今のままではどうにも相容れない経済活動と環境問題。「SDGs」は険しい世界状況の中で、我々がまだ気づけていない「道」を探そうとする取り組みのように思えます。私自身まだまだ勉強不足で、壮大すぎるように見えるこの「SDGs」の実現性については未知数です。でもスウェーデンの少女、グレタ・トウーンベリさんが一人立ち上がったことで世界に大きな影響を与えるようになったことを思えば、何かのきっかけさえできれば、「道」は開けるものなのかもしれません。


グレタ・トウーンベリ 「気候のための学校ストライキ」

 そして心のどこかで「日本の出番」という声が聞こえて来るのです。戦後復興の中で数々の公害、環境問題を経験してきた日本。四季に恵まれた環境の中で培われた感性をもっている日本人だからこそ、発揮できる知恵があるのではないかと思うのです。
 コロナ禍の自粛の中で、特に次世代を担う若い人達に、このことを考えてもらえればと願っています。

     テレビ屋  関口 宏

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