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菅さん、「Go To 五輪」をあきらめましょう

塾長  君和田 正夫

 コロナにおびえたまま新年を迎えました。ウイルスの変異種が急速に広がって、世界は入国の禁止合戦という新たな段階に入りました。菅首相が渋々決めた「Go Toトラベル」の一時停止程度の対応策では、とても済みそうにありません。加速する混乱の先に待ち構えているのは今年の大事業「東京五輪」です。「Go To」キャンペーンのように「経済と感染防止の両立」といった曖昧な対応をすれば、世界の顰蹙(ひんしゅく)を買うでしょう。国際オリンピック委員会(IOC)と日本政府が今なすべきことは、感染防止に全力投球することです。
 菅さん、コロナの変異種は五輪中止の決断を求めているのではありませんか。

  ワクチン頼み、株頼み?の五輪開催

 くすぶり続けてきた五輪の中止論が、正月早々から高まることは確実です。誰に遠慮しているのか、日本のメディアはこれまで中止に深く触れたがりませんでした。逆に日本経済新聞はIOCのバッハ会長が五輪が成功裏に開催されるという感触を得ていると報じました(12月12日付朝刊)。「8か月後の五輪(7月23日開会式)がそうなるかわからないという声はあるが、そういう人たちも日が近づくにつれて受け止めは変わっていくだろう」というのが会長のご託宣でした。その期待はワクチン開発が進んでいることと、11月に日本で開かれた体操の国際大会で感染防止に成功したこと、という二点が根拠です。運頼みの期待であったことは変異種の拡大で明らかになっています。

  「変異種」が促す中止の決断

 東京大会は「簡素な五輪」を目標にすることが昨年6月に決まっています。「簡素」といっても実現には様々な課題が待ち受けています。参加国は200カ国以上、1万数千人の選手。観客は海外からの観客を含めて500万人以上。開会式の観客数などは縮小が検討されているようですが、33競技数の種目の見直しなどはあるかもしれません。
 変異種の出現は、そうしたコロナ対策を限りなく不透明にしました。選手、観客のための感染検査、行動規制など、普段でも手間暇がかかる対策が、変異種のために、さらなる検疫強化が求められてきています。変異種が確認された途端に、各国がいち早く入国禁止合戦を繰り広げ始めています。

  コロナに追われる有力参加国

 五輪を成功させる一番のカギは参加国の支持です。昨年夏の延期も、多くの国、多くのアスリートが中止を訴えた結果ではありませんか。その時と今ではどこが変わったでしょうか。
 前回リオデジャネイロ五輪で500人を超える選手団を送り込んだ米国は今、最大のコロナ感染国で苦しんでいます。300~400人の選手団を組んだフランス、英国、イタリア、そして主催国だったブラジルなどもすべてコロナに苦しんでいます。
 菅首相は昨年暮れ「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として」東京で五輪・パラリンピックを開催する、という決意を表明しました。しかし現実は菅政権はコロナ騒ぎに追われっぱなしです。異様な株高だけが菅さんを支援しているのかもしれませんが、「Go To」へのこだわりが対応を遅らせ、混乱を招いています。五輪へのこだわり、メンツはもっと深刻で悲惨なものになる恐れがあります。コロナ対策、五輪いずれも「敗れた証」にならないことを願うばかりです。

  半年後の北京も開催困難に?

 東京五輪をさらに複雑にしているのは、冬の北京五輪と半年しか間隔がないことです。北京五輪は2022年2月4日から2月20日までの17日間。東京五輪は21年7月23日から8月8日まで、パラリンピックは8月4日から9月5日が開催期間です。日本政府としては東京五輪の中止などは考えたくもないでしょうが、もう一カ国、中止を考えたくない国があるとすれば中国です。東京を中止したら、北京も中止になる可能性が高くなります。
 実際に国際スキー連盟は昨年12月4日、新型コロナウイルスの影響で、北京五輪の本番に向けたテスト大会を全て中止すると発表しました。五輪の1シーズン前に本番会場で国際大会が行われないのは異例の事態と聞きます。それ以前の7月にもIOCの古参委員であるディック・パウンド氏(カナダ)はロイター通信のインタビューで東京五輪が再延期か中止となった場合、北京五輪も開催が困難になるとの見方を示していました。

  米中の対立、日本はどうする

 米中関係の悪化が五輪全体に濃い影を落としています。米国以外の国も貿易戦争、インド太平洋領海問題、香港、台湾、ウイグルなどの人権問題など多様多岐にわたる難問に反中国色を強めています。
 米国から見れば中国はコロナの発生源です。冬季五輪をボイコットする可能性はないでしょうか。「そんなことありえない」と楽観していいのか疑問です。米国はコロナ対策に失敗しました。その責任を中国に押し付けることを、これまで何度も繰り返してきました。
 東京と北京五輪。二つの五輪を挟んで日本はどのような外交を展開するのでしょう。
 菅さん、こだわりを捨てて、中止を決断しましょう。

(21.01.01)

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