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ワクチン始動

テレビ屋 関口 宏

 「予約、取れた?」。これがここしばらく高齢者仲間の合言葉のようになっていました。それほど新型コロナウイルスのワクチン接種の予約が、高齢者には難しいことになっていたということでしょう。子や孫にネット予約をしてもらった人もいますし、私は事務所の若い人に頼んでなんとか6月下旬に予約が取れました。

 現在では大規模集団接種も始まって、やっとワクチン接種が軌道に乗り始めました。でもこれはまだ5月末現在の高齢者対象の段階。その後始まる一般人対策も合わせて、果たして今年中にコロナ終息の目処は立つのでしょうか。新型コロナウイルスの感染が始まって約一年半。何はともあれ、やっとここまできたかと思われるこの頃です。


 以前、このコラムでもご紹介しましたが、100年ほど前、第一次世界大戦時に世界中に蔓延した「スペイン風邪」。当時は今ほどの医療体制もなかったでしょうし、まだ電子顕微鏡もなく、そのウイルスの正体もわからぬまま、約5,000万人以上の生命が奪われ、それが第2次世界大戦終結の大きな要因になったと言われています。ウイルスは結局2年ほど世界中で猛威を振るい、その後何となく終息していったということです。つまり全人類の6割から7割に集団免疫ができて終息したということになるのでしょう。今回は医療体制も進み、ワクチンを作れるようになったのに、やはり2年ほどの時間を要することに不思議を感じます。人間がどんな手を打とうと、ウイルス側は、「2年は活動期間を与えろ」と言っているようです。

 5月末現在、亡くなった方の数は全世界で350万人ほど。これ自身大変な犠牲者の数ではありますが、スペイン風邪の5,000万人以上とは大きな開きがあります。近代科学の進歩には感謝すべきなのでしょう。

 しかし専門家のお話では、ワクチンを接種した人でも、コロナに罹る危険性が全くゼロになるわけではないとのこと。ワクチンとはそういうもののようです。私も過去に、インフルエンザのワクチンを接種しながらインフルエンザにやられたことがありました。
 忘れてならないことは、人類がこれまで完全に根絶出来た感染症はただ一つ、「天然痘」しかないということ。つまり「結核」をはじめ、人類を苦しめてきた数々の感染症ウイルスは、地球上のどこかに残っていて、いつまた暴れだすか分からないということなのです。人間とは、そうした危険性を孕んだ環境の中で生存し得た、稀有な存在であることを、改めて考えさせられてしまいます。

 さて、東京都の人口は現在約1,350万人。そしてコロナ感染者の累計がほぼ15〜16万人(5月末現在)。ということは大雑把に考えても、東京人の90〜95人に一人は感染したことになるわけで、最近、感染した人の話を、身近なところでよく聞くようになったのも、その状況を表しているのでしょうか。例えば知人の子供が、ウイルスをどこからかもらってきた家庭内感染のケース。この家庭は四人家族で、10日ほどで全員が陽性になってしまったそうです。その他、独り身の感染者の悪戦苦闘ぶり。保健所に相談して病院または介護施設に入るはずだったのに、スムーズには行かなかったケースです。

 そんな話を聞かされる度、コロナの波がひたひたと自分にも押し寄せて来ているような気がして落ち着きません。とりあえず、6月のワクチン接種の日を、首を長くして待っているところです。

 テレビ屋  関口 宏

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