ゲスト様

2020年5月号

コロナ対策は「始まり」に過ぎない

塾長 君和田 正夫

 コロナ対策について日本の対応が遅い、という指摘が内外から聞こえてきますが、今や「シッチャカメッチャカ」の状態です。減収世帯への30万円支給があっさり一人10万円に代わって、補正予算の組み換えになりました。「緊急事態宣言」は10日後には突然、全国展開に切り替えです。コロナ禍が来年も続くかもしれないのに、政治家の「予見能力」の低さ、そして「危機対応能力」の乏しさが、次々に暴露されています。
 補正予算の組み換えになった緊急経済対策は4月7日の閣議決定段階では108兆円でした。それが公明党などの要求を容れた結果、2週間後に117兆円に膨れました。打ち出の小づちを振れば10兆円と言う単位のおカネが音もなく出てくるのです。それならば事業規模がGDP (国内総生産)の2割に相当し、国家予算を上回る、という「世界に比べて恥ずかしくない」(安倍首相)大経済対策なのですから、もっと内容充実に踏ん張るべきでした。もちろんこの経済対策には「マスク2枚」の466億円も入っています。後手後手に回った帳尻合わせを象徴するマスクです。

  「ロックダウン」はできない

 数え上げたらきりがないくらい後手を踏んでいます。
 PCR検査の遅れ、患者の収容先の混乱、病院の疲弊、緊急事態宣言の遅れと全国展開の遅れ。人との接触を8割減らせとか、企業に出社人員の7割削減とかを求めながら、営業自粛や休業をしやすくする補償制度は未整備……。
 後手を踏む第一の理由は緊急時を想定できない政治家のレベルの低さ、と答えるしかありません。新型インフルエンザ等対策特別措置法は2020年3月に改正されましたが、緊急事態宣言は要請と自粛で成り立っていて、休業補償やロックダウン(都市封鎖)といった現実的な課題を想定していないことがはっきりしました。
 国と自治体との役割分担も曖昧なままです。そのため現場を持つ自治体がノー天気の国を突き上げるかたちが増えました。その代表の休業補償は、乗り気でなかった国が臨時交付金の転用を認める形で妥協しました。
 安倍首相はロックダウンをしない、と表明していますが、今の法律では「できない」ということでしょう。「できない」で結構なのです。安倍権に持たせるには、あまりに危ないオモチャだからです。

  赤字国債は平時に抑え、緊急時にためらうな

 ではコロナと戦う武器は何か。お金しかないことははっきりしています。ところが金食い虫のアベノミクスは平時に行うべき財政再建や財政の健全化の目標を脇に置いてしまいました。赤字国債を発行して日銀に引き受けさせてきたのです。そのつけが今、回ってきています。
 国債の発行残高は2020年で900兆円と推測されます。国民一人当たり700万円を超える借金を背負っています。今回の経済対策では廃業・休業・失業などの対策費をケチった結果、23.4兆円の国債が発行されることになりましたが、本来こういう事態の時こそ額を気にせず、そしてためらうことなく赤字国債を投入すべきなのです。
 各国首脳が「第三次大戦」と表現しています。そんな時、モノを言うのはひごろの財政の懐具合、つまり健全性です。年内、場合によっては来年も何度か経済対策が必要になるでしょう。オリンピック・パラリンピックの行方によってはさらなる負担が加わります。
 今、政治家の強いメッセージが必要です。政治家の「伝える力」とは平時に蓄えた「覚悟」であり、「信念」であるはずです。なにも伝わってこない内閣を持ちたくありません。

(2020・04・26)

君和田 正夫

塾長

1941年(昭和16年)生まれ。早稲田大学卒。
1964年、朝日新聞社入社、経済部記者などを経て2005年(平成17年)テレビ朝日に。
退任後「独立メディア塾」の共同代表。

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