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Go Toの予算を医療や補償に

上智大学文学部新聞学科教授  小此木 潔

 政府が春にもGo Toキャンペーンを再開しようとしている。6月末までの事業継続のためとして、1兆円を超える金額を2020年度一般会計の補正予算に組み込んだ。夏の五輪もやる、Go Toも、という強気路線だ。
 しかし、感染防止とこれほど矛盾する政策はないのではないか。Go Toトラベルもイートも、旅行・観光・飲食業界の支援策だが、移動や飲食を推奨して人々の接触機会を増やせば、感染機会も増えるのは自明の理である。

  なぜGo Toキャンペーンにこだわるか

 「感染対策をきちんとやれば大丈夫」「Go Toが感染拡大につながったというエビデンスがない」などと政府は説明してきたが、感染拡大と「医療崩壊」(中川俊男・日本医師会長の年頭会見での言葉)の現実を前に説得力は乏しい。1月末には西浦博・京大教授らのグループによる研究で、Go To利用者の感染率が非利用者の6-7倍にも達していたこともわかった。
 それでもなお、首相がGo Toにこだわるのはなぜか。
 後ろ盾の二階俊博・自民党幹事長が全国旅行業協会長を務めているという政治的背景だけでなく、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会も一因だろう。分科会(尾身茂会長)は、Go Toにもともとは慎重だったともいわれるが、「東京をはずしてスタートする」と決めた政権の見切り発車を追認してきた。

  尾身会長と分科会の責任は大

 もともと感染終息後に行うはずのGo Toトラベル事業は昨年7月22日から始まったが、尾身会長はその直前の7月16日に経団連フォーラムで講演し、「旅行自体が感染を起こすことはないですから。もしそれが起きていれば日本中は感染者だらけ」と述べてGo Toを擁護していたのだった。
 首相は11月に地元・横浜の会合で、十分な感染防止対策を講じれば「移動で感染拡大は起こらない」と述べたが、尾身会長と分科会が政権のGo To推進を容認したことが首相の自信につながっていたのだろう。
 尾身会長はようやく12月6日のNHK討論番組で、「Go Toトラベルも含めて人の動きと接触を短期間、集中的に減らすことが、今の感染を沈静化するために必須だ」と述べたが、あまりにも遅かった。12月11日のネット番組で首相がまたも「移動では感染しない」と述べたのも、専門家らが首相の認識不足を助長あるいは誘導した結果であり、分科会の責任は大きいと言わざるを得ない。


菅首相の記者会見に同席する尾身会長(2日のNHK画面から)

  巨額予算を封印し感染対策に

 首相が2月2日に会見し、緊急事態宣言を3月初めまで延長すると述べたため、Go Toが再開される時期は遠のいた。しかし、春のどこかでGo Toを再開すれば感染は再燃し、医療のひっ迫は再び深刻化してしまう可能性が大きい。宣言の効果を損なわないようにするためにもGo Toは封印し、その巨額予算を飲食店などの休業補償や医療に回すべきではないか。2日の会見では、記者たちにそのことを聞いてほしかった。

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