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コロナに立ち向かう女性リーダー

塾長  君和田 正夫

 妻に言われました。
 「女性の方が速くていいわね」「?」「コロナ対策よ」「えっ、コロナ?」「東京都の小池知事とか、ドイツのメルケル首相とかよ」
 なるほど、このところ小池知事はテレビCMで頻繁にコロナ危機を訴えています。都知事選を控えているとしても、見事な演出です。一方、安倍首相は星野源さんとの「コラボ動画」です。うーん、この違いはどこから来るのでしょう。
 コロナ対策の指揮を執る何人かの女性リーダーを思い出しました。彼女らを見ると一国のリーダーとは何か、そして女性のリーダーシップを自然に受け入れる社会とは何か、日本との違いはなにか、と考えさせられます。

 「危機時の手本」 アーダン首相

 まず、ニュージーランドです。
 ニューズウィーク日本版は4月13日の記事で
「英米メディアが絶賛、ニュージーランドが新型コロナウイルスを抑え込んでいる理由とは」
という大きな見出しを付けて、若い女性首相ジャシンダ・アーダーン氏を激賞しています。以下、要約です。

 他国が感染症を「抑制」しようとしている中でニュージーランドは「排除」しようとしている。外国籍の人が中国便を使って入国することを、2月3日にすでに禁止した。(日本では2月3日、横浜港に到着したダイアモンド・プリンセス号で騒ぎが始まりました)
3月19日にはどの国からの入国も禁止した。3月24日に緊急事態宣言(日本の緊急事態宣言は4月7日)、翌25日には4週間のロックダウン(都市封鎖)という最高レベルの対応に踏み切った。同首相は声明文、記者会見、インタビュー、SNSなどを使って「厳しく迅速な」対応策を国民に繰り返し説明した。英国のインディペンデント紙は「危機におけるコミュニケーションのお手本」と絶賛している。


 4月23日付の朝日新聞朝刊「世界発」でも「NZ首相 際立つ発信力」「公邸から動画 500万回再生」という特集記事を掲載しています。
 ちなみに、ですが、彼女は在任中に産休を取った世界初の首相として話題になりました。

ニュージーランド首相の特集記事

 デンマークも、ノルウェーも、ベルギーも

 女性リーダーの話を続けましょう。欧州で最初にロックダウンを決めたデンマークのメッテ・フレデリクセン首相は3月14日に国境を封鎖しました。ノルウエーのエルナ・ソルベルガ首相も3月16日に入国禁止措置を取り、ベルギーのソフィー・ウイルメス首相は3月18日に全土を封鎖しました。背景に域外から外国人が入国することを禁止する欧州連合(EU)の合意がありますが、日本が米・中・韓などの入国拒否を4月3日から実施したことと比べると、素早く、厳しい対応でした。 デンマークのフレデリクセン首相は昨年、トランプ大統領が「グリーンランド買収」を持ち出したとき、「バカげている」と一蹴したことでも有名です。トランプ大統領はデンマーク訪問を中止しました。

 メルケル首相の演説、スイス大統領の手紙

 冒頭に名前の出たドイツのアンゲラ・メルケル首相はコロナ騒ぎの最中、3月19日に国民に向けて行った演説が話題になりました。メルケル首相は東ドイツ出身で、1989年11月9日は35歳の物理学者でした。サウナを出たとき、ベルリンの壁の崩壊を知り、群衆と西側になだれ込みました。その体験が演説に生かされています。またスイス連邦大統領のシモネッタ・ソマルーガ氏が国民あてに出した手紙も感動的でした。いずれもネットで検索できますので、今回はメルケル首相の演説のごく一部を紹介します。(訳はギュンターりつこさん)
 「イベントは無くなり、見本市、コンサートは中止、学校も大学も保育施設も閉鎖、公園で遊ぶことさえ出来ません。…こういった制限は、この国にはこれまであり得ないことでした。旅行や移動の自由を苦労して勝ち取った私のような人間にとって、そのような制限は絶対に必要な場合にのみ正当化されます。民主主義国家においては、そういった制限は簡単に行われるべきではなく、一時的なものでなくてはなりません」

 台湾「プロを集めて爆速の対策」

 そしてアジアにももちろん注目の女性がいます。
 中国と対立し、世界保健機構(WHO)からも締め出されている台湾です。新型コロナウイルスの感染を最低限に抑えている、と評価されています。
蔡英文総統は2020年の総統選で中国との関係が焦点となるなかで圧勝しました。そして今、コロナ対応が注目されています。
 「PRESIDENT Online」(4月4日)で藤重太アジア市場開発・富吉国際企業顧問有限公司代表は、台湾が敏速にコロナ対応ができた理由を国会、議員のあり方を含めて説明しています。「日本は論功行賞などで素人でも大臣になってしまうが、台湾はその分野のプロでなければ大臣にはならない。この政治システムが最大の理由だ」。藤氏は台湾のコロナ対策が「爆速である」と表現し、その理由として「閣僚に素人がいない」ことを挙げています。一部を引用します。

 「台湾では国民の直接選挙で選ばれた総統が行政院長(首相に相当)を決め、その行政院長が中心となって閣僚を任命する。最大の特徴は、『大臣』に相当する人々が誰ひとり『国会議員』ではないという事実だ。行政院長や部長・政務委員(大臣)は、立法委員(国会議員)ではないのだ」。

 こうした例を見ていると、日本はこれでいいのか、という疑問が湧いてきます。政治家でない、その道のプロが大臣になることはまず考えられません。

 何代先の首相まで男で決まり?

 今回のテレワークで評判が悪かったのが「はんこ文化」でした。押印のために出社せざるを得なかった、という批判が多発しています。「日本の印章制度・文化を守る議員連盟」(通称・はんこ議連)という議員の集まりがあることを知って驚いたことがあります。しかもその会長が情報通信技術(IT)担当大臣と聞いて二度びっくりです。竹本直一大臣!これはほとんど「お笑い」の世界だと、ご自身で思いませんか。
 さらに根本的な問題は、国会、地方議会とも男性社会であることです。世界の女性リーダーを眺めただけで日本の後進性が浮かび上がります。岸田文雄、石破茂、小泉進次郎、河野太郎…。日本の国会は何代も先の首相まで二世、三世議員が候補になっているではありませんか。
 妻は言いました。「男はいろいろ考えるからダメなのね」。いや、逆でしょう。

(2020・04・26)

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