トランプ、勝利の方程式
元テレビ朝日モスクワ支局長 武隈 喜一
『ボストン・グローブ』紙のコラムニスト、ジョン・エリスが9月1日、トランプ再選の勝利の方程式について書いているので、紹介しよう。
https://www.bostonglobe.com/2020/08/31/opinion/biden-is-track-lose-electoral-college/
トランプ支持と言わない支持者
コラムニストは、まずトランプ候補は「一般投票では勝てない」と明言し、トランプ陣営も一般投票で勝てるとは信じていないと言う。一方、民主党のバイデン候補は「勝利に必要な選挙人の数を取れない」と言う。CNBCの最新の世論調査(8月21-23日)によれば、当選のカギとなるアリゾナ、フロリダ、ミシガン、ノースカロライナ、ペンシルバニア、ウィスコンシンのスウィング・ステーツ6州で、新型コロナウイルスへの不安を感じる人は49%から45%へと減り、トランプ大統領のコロナ対策を評価する声が3%アップして47%になるとともに、経済への悲観的な見方は6%下がった。それは、この6州ではバイデン候補のアドバンテージが消えてしまったことを意味する。しかも世論調査での「隠れトランプ」の心理は今も続き、トランプ支持者の11%余りが、質問されても「トランプ支持」とは答えない、と言う。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-08-28/new-study-suggests-polls-are-missing-shy-trump-voters
つまり、トランプをめぐる世論調査の数字から現実を見るためには、調査上の誤差を考慮に入れると同時に、常に「隠れトランプ」分の下駄をはかせる必要があるのだ。
「民主の間違い、〈国民投票〉の戦略」
バイデン陣営は、今年の選挙は、経済、新型コロナウイルス対策、人種差別による社会的混乱について、現職トランプ大統領への信認を問う「国民投票Referendum」だという位置づけをしているが、この戦略そのものが間違っている、とコラムニストは言う。なぜか。新型コロナウイルスへのワクチンは、10月中旬までには米国食品医薬品局が第3段階の実証試験を飛ばして、緊急許可を下して市場に出まわることになるだろう。トランプ大統領は選挙直前に「ワクチン」をアピールすることができる。
米の実態経済は10月中旬にはまだ回復のメドが立たないだろうが、トランプ大統領は民主党が多数を占める下院が、大統領の提出した第二弾の景気対策を承認しないことが原因だと責任転嫁する。ワクチン報道によって株価さえ支えられれば、もともと経済政策については、トランプ大統領の支持率はバイデン候補よりも高い。
https://www.nbcnews.com/politics/meet-the-press/biden-remains-ahead-trump-nationally-eve-conventions-nbc-news-wsj-n1236873
社会的混乱については、デモ参加者が暴力的になればなるほど、トランプ大統領は「法と秩序の守り手」であるという姿勢を前面に出し、バイデン候補の背後にいる過激な左翼が混乱を煽っている、とこれまた責任転嫁することができる。有権者の恐怖心をかきたてながら、そんな左翼に操られているバイデンに政権を任すのか、と訴えていけるわけだ。
そして、最後に、米国の大統領選挙では大切なことだが、「強い馬と弱い馬を目にした時、人は自然と強い馬の側につきたがる」という選択心理だ。共和党大会の4日間は、虚実をないまぜにしながら、これでもかというくらいに「強い馬」トランプを見せつけた。
トランプに票を入れるには、トランプが好きである必要はこれっぽっちもないのだ。
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