ゲスト様

2020年11月号

TV各局、大統領会見をカット

テレビ朝日アメリカ 社長  武隈 喜一

 11月5日午後6時すぎ、トランプ大統領は3日未明以来はじめてカメラの前に姿を見せ、ホワイトハウスで会見を始めた。当落のはざまにある大統領の会見をテレビ局が生中継で伝えるのはニュースバリューからして当然だが、MSNBCは、会見が始まってすぐ中継をカットした。CBS、NBC、NPRも会見を終わりまで中継せず、途中でスタジオに降りた。

  「大統領の噓を垂れ流すことはできない」

 MSNBCのニュースアンカー、ブライアン・ウィリアムズは視聴者に対して「ここでわたしたちはアメリカ合衆国大統領の会見を途中で切るだけではなく、アメリカ合衆国大統領の発言を訂正するという異常な事態のなかに置かれている」とことわりを入れた。そしてもう一人の女性アンカーは「いま危機の火薬庫の中にあるこの国で、トランプの嘘だらけのプロパガンダを垂れ流すことに手を貸さないためには、途中でカットせざるを得なかった」と語った。NPRも「トランプがメディアの前で話しているが、ファクトチェックのためにカットする」としてスタジオに戻った。

  「助けてくれる人はいない」と姪

 CNNはトランプ大統領の会見を最後まで伝えたあと、MCのアンダーソン・クーパーがショックを隠せない様子で「証拠もなく、選挙への誹謗中傷を繰り返すだけ。あれがアメリカ合衆国の大統領、世界でもっともパワフルな人間だとは。まるでひっくり返ってお日様にさらされた、ぶざまな太ったカメのようだ。自分の時代が終わったことがわかったのだろう」と語った。
 トランプ大統領の会見は、「民主党は不正を行って選挙をかすめ取ろうとしている」として選挙のプロセスを非難することを繰りかえすものだったが、書かれた原稿に目を落とし読み上げるだけで、いつものトランプらしい攻撃的な姿勢は影も形もなかった。法的手段に訴えると繰り返しても、虚ろなまなざしが原稿と中空を行ったり来たりするだけだった。
 この会見を見ていたトランプの姪のメアリー・トランプはMSNBCの番組で、「トランプは絶望しているように見えた。彼が受けたダメージは計り知れない。誰も助けてくれる人がいないのでしょう」と述べた。

*トランプ大統領の記者会見は以下
https://video.foxnews.com/v/6207549487001#sp=show-clips
(2020.11.05)

武隈 喜一

テレビ朝日アメリカ 社長

1957年東京生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科、
東京大学文学部露西亜文学科を卒業後、出版社、通信社などを経て
1992年テレビ朝日入社。1994年から1999年までモスクワ支局長。
2010年から12年まで報道局長。2016年7月からテレビ朝日アメリカ社社長。ニューヨーク在住。

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