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2020年7月号

共和党に”反Trump”派

テレビ朝日アメリカ 社長  武隈 喜一

 前回2016年の大統領選挙では、トランプ候補の粗暴なポピュリズムとモラルのなさに、共和党内部からも“Never Trump”(トランプだけは御免だ)という動きがあった。議員のなかにも党の重鎮にも”Never Trump”がいた。しかし、就任から3年が経ち、強引な手法ながら手堅い岩盤支持層をつかむと、共和党議員たちは雪崩を打ったようにトランプ支持になびき、弾劾裁判でも中国との貿易戦争でもトランプ大統領を支えた。
 しかし、現状を憂え、このままトランプ政権が続けば、共和党のみならず米国の民主主義が崩壊するという危機感を持つ共和党員の中から、トランプ再選を阻もうというグループが形成され、活発に反トランプ宣伝を進めている。

  リンカーン・プロジェクトで落選を訴え

 2019年12月に結成されたこのグループ、スーパーPAC「リンカーン・プロジェクト」は、11月の選挙を左右するウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州などのスウィング・ステーツの保守層にトランプ落選を訴えかけ、議会選挙でもトランプ支持の候補者を落選させようという運動を展開しており、今年1月からはTVやデジタルの60秒スポットCMを流し始めた。


リンカーン・プロジェクトのホームページ

 主意書には「われわれの目標はトランプ大統領とトランプ支持者を投票で打ち負かすことだ。われわれの政策は多くの点で民主党とは異なるが、しかし、憲法を守ろうという思いは共通だ」と書かれ、トランプは大統領職に不適格で「モラル」に欠けている、と訴えている。
 当初は、訴求力のない動きと思われていた「リンカーン・プロジェクト」だが、新型コロナウイルスへのトランプ大統領政権の対応への批判が高まるにつれて存在感を増し、5月には2012年の大統領選挙を戦ったミット・ロムニー候補の選挙参謀だったベテランのストラテジスト、スチュアート・スティーヴンス氏も戦列に加わった。「世界が狂気に向かっているとき、わたしたちにできることは世界と一緒に発狂しないことだ。わたしの狙いはトランプだ。共和党支持者にトランプが何者であるか知らせることがわたしの仕事だ」とスティーヴンスは語っている。

  大統領の健康不安説を前面に

 トランプ大統領は「リンカーン・プロジェクト」を「負け犬」と呼び、不快感を隠していないが、「リンカーン・プロジェクト」は草の根の寄付金だけでなく、「隠れ反トランプ」ともいえるウォールストリートからの大口の献金も集めている。6月に入ってからは、ボルトン前補佐官の「大統領は再選への協力を中国の習近平主席に依頼した」という証言が出た同じ日に、トランプ政権の対中国政策を批判するCMを流すなど、立て続けに60秒スポットの広告を流し、注目を集めている。ことに、トランプ大統領の健康不安を前面に押し出した意見広告はインパクトが強く、民主党バイデン候補への側面からの援護射撃になっているようだ。

※リンカーン・プロジェクトのCMは以下
https://youtu.be/70683WVzlLE
https://youtu.be/NVy_LWM091g

武隈 喜一

テレビ朝日アメリカ 社長

1957年東京生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科、
東京大学文学部露西亜文学科を卒業後、出版社、通信社などを経て
1992年テレビ朝日入社。1994年から1999年までモスクワ支局長。
2010年から12年まで報道局長。2016年7月からテレビ朝日アメリカ社社長。ニューヨーク在住。

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