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4年も磨いた「ウソを売る技術」

テレビ朝日アメリカ 社長 武隈 喜一

 トランプ大統領は大勢の支持者を前にこう述べた。
 「大事なことは他のコミュニティを監視することだ。この選挙が盗まれないように。この選挙が盗まれないことを望む」。
 そしてツイッターに投稿した。
 「この選挙は、ウソつきで××を推す歪んだメディアによって絶対に不正が行われている。多くの投票所においても」。
 また、トランプの顧問弁護士を務めるジュリアーニ元ニューヨーク市長は、こうツイートしている。「死んだ人たちは民主党に投票する。フィラデルフィアやシカゴの選挙が公平だと言うのか?」。

  対ヒラリー戦と同じ戦法

 最初の発言は、10月10日、ピッツバーグでの演説。二番目は10月16日のツイッターへの投稿。ジュリアーニの投稿は10月17日。――ただし、××に入る名前は「ジョー・バイデン」ではなく「ヒラリー・クリントン」だ。
 実は、この三つの発言は4年前の2016年の大統領選挙直前のものなのだ。
 「選挙で大規模な不正があり、主要なメディアは民主党の不正に加担している」というのは、なにも今回の選挙でトランプ陣営が持ち出した非難ではなく、4年前とまったく同じ作戦なのだ。ただし、2016年の選挙前にはさかんに不正を言い立てていたトランプ陣営も、選挙人の数で勝利し大統領に就任したため、選挙後に不正を追及することはなかった。
 当時はこうした発言から距離を置こうとする共和党幹部も多かった。しかし、2018年の中間選挙では、多くの共和党議員が、この「虚構」を利用し始めた。2016年にトランプと共和党の予備選を争ったマルコ・ルビオ上院議員は、「民主党の弁護士たちが選挙の結果を変えた」と言い張り、ポール・ライアン前下院議長も、証拠を示さないまま、カリフォルニア州で多くの不正があった、と発言した。当初は共和党票が優勢だったのに、なぜか民主党票が増えたと主張し、こう述べた。「開票当日は多くの選挙区で共和党候補が勝っていたのに、3週間後にはカリフォルニアのほとんどの議席を失っていた」。
 トランプ大統領に投票した7370万人の7割以上が、「バイデン陣営は選挙で不正を行った」と信じているのは、今年の選挙戦でのトランプ陣営の宣伝に惑わされているわけではない。トランプ+共和党は、この4年をかけて「民主党は選挙で不正を行っている。ことに郵便投票、不在者投票は大規模な不正の温床だ」という宣伝を、地方選挙も含めれば、耳にタコができるほど繰り返してきた結果なのだ。

  育て上げた「ウソを買う人々」

 トランプの個人弁護士を長く勤め、トランプの事業にまつわる経済犯罪で有罪判決を受けたマイケル・コーエンは2019年2月、下院公聴会に呼ばれ、「自分の経験から判断する限り、トランプは2020年の選挙で敗れても平和的な政権移行はありえない」と証言したし、民主党のペロシ下院議長も、トランプが僅差で敗れた場合、ホワイトハウスを明け渡さない危険性について、早くから警鐘を鳴らしていた。

 ペロシ下院議長は「トランプを排除するには、民主党候補が圧倒的な勝利を収めるしかない」と言っていたが、結果はバイデンとトランプの得票数、得票率の差は600万票、3.7%だった。
 虚構によるプロパガンダは「ウソを売る技術」と言われるけれども、「売るウソ」は喜んで買ってくれる人があってこそのものだ。この数字は、この4年間、共和党・トランプ政権が「ウソを買う人びと」を上手に育て上げてきた結果だとも言えるだろう。

(2020.11.21)

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